”スキー板開発者”を名乗りながらも、スキー板についてなにもわかっていなかった(だろう)男が、実際にスキー製造工場を訪れ、スキー板の製造作業をすることになった。
この特別な経験を追体験しながら、スキー板の作成素材、内部構造、制作工程などの謎を、エンタメ形式で見ていく3回の連載企画。今回はその第2話。
初日から脳みそがパンパンになるほどの知識を詰め込まれた、エンタメスキーヤーの河野祥伍。2日目はどうなる!?
第一話 未知の世界へ潜入編はコチラ
「なんか上手くいく気がする」という死亡フラグと、優しすぎる職人の特別対応
昨晩まとめたことが、どこまでまとめられているかも定かでないまま、不安な朝を迎える。
ビジネスホテルの遮光性の高い重いカーテンを開けると、眩しいまでの朝日が差し込んできた。
雲ひとつない快晴。高気圧ど真ん中。
「あれ、もしかするとなんかうまくいくかもしれない」
そんな気持ちすらも湧いてくるいい天気だった。
9時に会社へ着くと「昨日はゆっくり休めましたか」と、昨晩は遅くまでなにもわかっていない私の質問にLINEで一つ一つ丁寧に回答してくださった江戸さんが優しく声をかけてくれる。
そんな優しさに、愛想笑い半分で本日の研修が始まった。
「いま里村が全体の準備をしていますので見に行きますか」

工場へ足を運ぶと、里村さんはプレス機の準備をしていた。板は年間製造台数を一気に作り上げる。
私が作るラプターは既に出荷分を作り終え、生産を終えていたが、今回私が研修をするためにわざわざプレス機をラプター用に調整してくれていた。
さらに組み込みをする部屋にはバシッと部材が整えられており、設計図も張り付けられていた。
さて、ここまで整えられていれば、上手くいく……はずだろう。

職人は15分、私は1時間目標。なのに目の前の設計図が「謎の暗号」にしか見えない件
組み込みは型のなかにスキーの部材を接着剤と共に重ねていく作業だ。
金型のなかに部材を入れる、接着剤を塗る、そしてまた部材を重ねる。この繰り返しだ。
職人は15分で一本の板の組み込みを終えるという。
「まー、最初は1時間くらいはかかるよ!」
と笑う里村さん。一時間くらいまでは許容範囲ということか。とりあえず職人さんの4倍の時間をかけても良いという安心感で心がすこし軽くなった。
ゴム手袋をして、作業台の前に立つ。深呼吸をしながら部材を確認する。

……よくわからない。
なんなら初めて見たのかもしれない気もする。この時点ではもはや素材が部材になった状態を見ていないものすらあった。
混乱状態のなか、用意してくださった設計図を見る。
よくわからない。
説明をしてもらったFRPとか補強材とかじゃなくて、商品名で書いてあるからだ。
……聞いてない。
「ちょっと一回休憩お願いします」とも言えない雰囲気。
行くしかない。
ただ、経験上知っている。
心が「No、Go!」と叫んでいる時にプッシュするといいことがないということを。
