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なぜ私たちは「選ぶこと」に疲れたのか…AI活用から百貨店離れまで広がる“選ばない消費”の正体

なぜ私たちは「選ぶこと」に疲れたのか…AI活用から百貨店離れまで広がる“選ばない消費”の正体

スーパーでにんじんを選ぶ、服を探す、小説の展開を考える。私たちは日々、無数の選択にさらされている。しかしAIのおすすめ機能や自動化が暮らしに入り込むなか、「自分で選ばなくて済むこと」は新たな価値になり始めた。創作現場でのAI活用から、かつて「選ぶ楽しさ」を提供してきた百貨店の苦境までを一本の線で結ぶと、現代消費の大きな変化が見えてくる。

書籍『選ばない消費 AI時代の暮らしと価値観』より、一部を抜粋・再構成して紹介する。

創作も選ばない

人間がやるよりもAIの方が速く、正確に処理できる──そう判断される場面では、実際に置き換えが進んできました。AIの話題ではよく、「AIにはAIの得意なことを、人には人にしかできないことを」といった言説が聞かれます。

ですが実際には、「人にしかできない」と思われていた領域にまで、AIの活用が広がり始めています。その象徴の一つが、文化や芸術といった創作の分野です。

たとえば、小説については、2024年に芥川賞を受賞した九段理江さんの『東京都同情塔』は「AI小説」と呼ばれ、話題になりました。ただ九段さんがこの小説でAIが作った文章を利用したのは、登場人物がAIに問いかけをしてAIが答える部分だけで、実質的にはAIが書いた小説ではありませんし、テーマにもなっていません。受賞後には、「AIが書いた小説」と誤解されたことに戸惑った様子もうかがえました。

興味深いのが、同時に『八月の御所グラウンド』で直木賞を受賞した万城目学さんが、「実は自分もAIを頼っていた」と明かしていたことです*1。

万城目さんは改稿作業中の深夜、編集者に相談できないため、「大学生と社会人になったカップルがすれ違う理由」についてChatGPTに問いかけたそうです。すると、通常なら対話を重ねて30分以上かけて整理する内容を、わずか一分で整理してくれたといいます。こうした創作支援としてのAI活用について、朝井リョウさんなど他の人気作家も以前から前向きなコメントを寄せています*2。

そもそもエンターテインメント業界では、ハリウッド映画の脚本づくりにAIが活用されることがよく知られています。

たとえば、「舞台は地方都市。はじめに殺人事件が起きて、疑わしい人物があらわれ、その人物の疑わしさが次第に明かされていく、ただ物語の大詰めでその人物が犯人ではないと判明し、実は冒頭から登場していた誰からも疑いをかけられないような人物が犯人だった」というようなプロットを入力すれば、AIはあっという間に物語を作ってしまいます。

こうして見ていくと、創作の現場でも、「選ぶ」ことは時間や労力を伴う非効率な行動とされ、AIに任せる動きが着実に広がってきているように思います。それは事務作業のような機能的な分野にとどまらず、「人にしかできないだろう」と思われていた営みにまで、静かに入り込んでいるのです。

私たちはなぜ選ばないのか

なぜ、こうして「選ばなくていい」環境が、意識的にも無意識的にも広がっているのでしょうか。それは、私たちが「選ぶこと」に、そしてときには「選ばされること」に、少なからず疲れを感じているからだと考えられます。

ここでは、選ぶことの面倒さ、そしてそこにある社会的背景について考えてみたいと思います。

「面倒だから」という理由で選ぶことを避ける行為は、手抜きや適当といった、ネガティブな意味合いで捉えられがちです。でも、社会の進歩や技術革新の流れを考えると、それは私たちがより良く生きていくために自然と生まれてきた選択ともいえるのではないでしょうか。

たとえば産業革命では、多くの工程が人の手から離れ、機械によって自動化されていきました。当時はラッダイト運動(機械打ち壊し運動)のように、機械の導入に対する反発もありましたが、今、AIや自動化に対してそのような強い反対運動が起こっているかというと、そうではありません。

むしろ、日々の暮らしに無理なく溶け込むかたちで、受け入れられています。そう考えると、「選ばない環境」が整備されていくのは、面倒を避けたいという私たちの意向を反映した、ある種の必然なのかもしれません。

自動運転もまたしかりです。人手不足に加え、人が運転するより機械に任せた方が安全で効率的だという発想が、開発の背景にあります。私たちは確かに目的地は自分で選んでいますが、そこにたどり着くまでのルートや手段は、すでに自ら選んでいないのです。

ここでも、「選ばない化」が静かに、着実に進んでいます。産業革命以来、あらゆるものが加速度的に自動化されてきた中で、私たちは自然と「選ぶこと」から距離をとるようになっているのかもしれません。

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