ラーメンYouTuberとして重視する「間口の広さ」
──他の方のラーメン評で感銘を受けたものはありますか?
ラーメン官僚(田中一明)ですね。あの人は「文章偏差値」みたいなものを独自に算出しているんですよ。
例えば「美味しい」みたいに直接的な表現を使うと文章偏差値が落ちるらしいんですよ、ラーメン官僚いわく。つけ麺とかで「麺線が綺麗に整えられている」みたいな表現を使うことも、官僚の尺度に当てはめたら文章偏差値が50以下だと。「麺が風を孕む」とか、そういう表現を推奨しているんです。
──なるほど……。
なので、僕のコメントとかは文章偏差値がそんなに高くないことになるんですよね(笑)。ただ、僕はYouTuberとしてコアなラーメンマニアだけじゃなく、より多くの人に届けたいんです。
というのも、これまでのラーメン評論家の方って、業界やマニア向けに発言している方が多かったんです。僕は動画を始めて4〜5年目のタイミングから、そこに向けての発信をやめました。なので専門用語は控えていますし、材料の詳細についてもあまり言及しないようにしています。
──例えば「SUSURUラーメンフェス」の主催なども「多くの人に届けたい」という気持ちから発展したものなのでしょうか?
そうなんです。地方に住んでいて東京や大阪のお店に行けない人でも、フェスで実際にラーメン屋を呼ぶことでコアなお店のラーメンを食べることができるじゃないですか。そうやって間口を広げたいんです。
ラーメンは一口目が8割
──さらに、今年はご自身のラーメン店「北ノ醤油チーホー」をオープンしました。
今年2月くらいまでは自分のラーメン屋なんて全く考えていなかったんです。ただ、その時期に「東京競馬場でラーメンを提供してくれませんか?」という依頼があって、いざ提供してみたら毎日1000杯以上のラーメンが売れたんですよ。
しかも、競馬が雪で中止になった日でも、僕がいないにもかかわらず多くの人が訪れてくれて。その時に僕自身じゃなくてラーメンの味自体を求めている人がいることに気づいたんです。それで手伝っていただいた「俺の生きる道」の店主さんが本格的に店舗を作ることを提案してくれて、急ピッチで準備を進めました。
──「北ノ醤油チーホー」で提供するラーメンの味を追求する動画では、しきりに味の「尖り」を重視していましたよね。
まず、自分の好きな味を作ろうとしたんです。個人的には一口目に感じるパンチが重要で、ラーメンの印象の8割はここで決まると思うんですよね。なのでしょっぱく感じられるギリギリのラインを目指して「尖り」を重視したんです。
ただ、いざ開店してみると、ラーメンを食べ慣れてるマニアの方は「もっとパンチが欲しい」という感想を抱き、普段からラーメンを食べているわけではない方は「しょっぱすぎる」という印象らしくて。結果的に、今の「北ノ醤油チーホー」では一般的なお客さんに合わせてパンチを調整しています。
──まさにYouTuberとして間口を広げるスタンスと一緒ですね。
結局、お客さんがいないと成り立たないんですよね。お店にもフラッと立ち寄れるようにしたくて、予約制にはしていません。「みそきん(注:YouTuberのHIKAKINが監修するラーメン店)」や「飯田商店(注:神奈川県湯河原町に位置する全席予約制の超人気ラーメン店)」のように一瞬で予約が埋まる店もありますけど、僕がやるならグルメとしてのラーメンというより昼ごはんとして気軽に楽しめるものにしたかったんです。

