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席を譲られるたび、あの笑い声を思い出した私

席を譲られるたび、あの笑い声を思い出した私

ガラスに映った顔

あの若い女性の表情を、私は見ないようにしていました。手すりを握り、紙袋を足元に置いて窓の外を見ていましたが、ガラスには自分のこわばった顔が映っていました。周囲の乗客の視線も感じていました。

あの女性は荷物を見て大変そうだと思い、声をかけてくれただけです。怒鳴る理由など、あの人にはないのです。降りる駅に着いてドアが開いたとき、私は振り返りました。目が合いました。さっき怒鳴ったときとは違う声で、「あなたが悪いんじゃないの」と伝えました。それだけ言うのが精1杯でした。

そして...

ホームに降りて紙袋を持ち替え、改札へ歩き出しました。走り出した電車の窓の向こうに、吊り革を持ったあの女性の姿が一瞬だけ見えた気がしました。謝るべきだったのに、あれだけしか言えなかった自分に腹が立ちました。1年前の出来事を、あの人にぶつけてよいはずがありませんでした。

次に誰かが席を譲ってくれたら、今度こそ「ありがとうございます」と答えよう。そう決めて、顔を上げて歩きました。

(60代女性・定年退職)

本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。

(ハウコレ編集部)

配信元: ハウコレ

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