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細菌たちは生き残るために「脱出ポッド」を放出できる――射出装置の正体は納豆のネバネバ

細菌たちは生き残るために「脱出ポッド」を放出できる――射出装置の正体は納豆のネバネバ

脱出ポッドの射出装置がクラゲの針にも仕込まれている

脱出ポッドの射出装置がクラゲの針にも仕込まれている
脱出ポッドの射出装置がクラゲの針にも仕込まれている / Credit:Canva

実のところ、チームが数ある物質のなかから納豆のネバネバ(γ-PGA)に目をつけられたのには、理由がありました。

手本があったのです。

クラゲです。

クラゲに刺されると痛いのは、触手の表面に、顕微鏡でしか見えない発射装置がびっしり埋まっているからです。

中には毒針が、きつくきつく巻きこまれています。

その発射装置に詰まっていたものが、同じネバネバ成分のγ-PGAでした。

旅支度をすませた細胞が糸を吐いていると分かったとき、チームの頭にはすでに、この毒針が浮かんでいたのです。

だとすれば細菌も、同じ物質で似たようなことをやっているのではないか——そう見当をつけて確かめにいった結果が、あの「脱出」でした。

クラゲの場合、カプセルの中は酸っぱい水で満たされています。

この状態だと、糸は互いにぴったり寄り添い、小さく畳まれたままでいられます。

ところが引き金が引かれて水が流れこみ、酸っぱさが薄まると、糸の一本一本が磁石のように反発しはじめます。

同じ極を近づけたときの、あの押し返す感じです。

糸はいっせいに離れようとし、同時に水を吸ってふくれあがり、その力が毒針を叩き出すのです。

チームは、この理屈をそのまま細菌で試しました。

糸を多めに作るようにした要塞に流す水を、酸っぱい水とふつうの水で交互に切り替えたのです。

結果、要塞は予想どおりに、呼吸するように伸び縮みしました。

細菌の糸は、クラゲの糸と同じ電気の理屈で動いていたのです。

クラゲと細菌は、生き物の家系図をたどると、途方もなく遠い親戚です。

共通の先祖にたどり着くには、気が遠くなるほど遡らなければなりません。

それでも両者は、同じ糸にたどり着きました。

片方は毒針を撃つために。

もう片方は、仲間を撃つために。

次に納豆の蓋を開けたとき、箸から伸びるあの糸を、少しだけ長く眺めてみてください。

条件がほんの少し違えば、同じ糸がクラゲの毒針を撃ち、細菌の脱出ポッドを飛ばすのですから。

参考文献

Eject! Bacteria discovered with the ability to jettison cells as a survival mechanism
https://www.eurekalert.org/news-releases/1134711

元論文

Self-generated hydrogel ejects bacterial cells for localized biofilm dispersion
https://doi.org/10.1038/s41564-026-02413-4

ライター

川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。

編集者

ナゾロジー 編集部

配信元: ナゾロジー

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