先に進めたくて、嘘をついた
内見の予約が、彼女といつも会う約束と重なっていました。理由を正直に伝えれば、まだ漠然と話しただけの将来を、俺が勝手に一歩進めようとしていると知られてしまいます。だから理由は言わずに、会えないとだけ伝えました。
消そうとして、間に合わなかった
その予約をすると、店がある地名だけのそっけない予定が、彼女と共有しているカレンダーに勝手に入っていました。
気づいて慌てて消そうとしたときには、もう通知が届いたあとです。部屋を見て回る間、彼女から返ってきたのは絵文字1つきりで、それ以上のメッセージはありません。
いつもならもっと話しかけてくる人なのに、と思いながらも、サプライズを最後まで隠したい気持ちが勝ってしまいました。あの予定を見た彼女が、俺を別の誰かと会っていると疑っているとは、思ってもみなかったのです。
