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「会社員だから」って諦めなくていい!伊藤園発のジャスミン香水『Crazy Jasmine』仕掛け人に聞く、組織で“私の好き”を形にする働き方

「会社員だから」って諦めなくていい!伊藤園発のジャスミン香水『Crazy Jasmine』仕掛け人に聞く、組織で“私の好き”を形にする働き方

会社員が「自分の夢を叶える」となると、会社を辞めて起業するルートをイメージする人が多いかもしれません。しかし「社内ベンチャー制度」に挑戦し、社長になったという経歴をもつ女性がいます。Crazy Jasmine Tokyo 代表取締役社長の向田 陽子さんは、伊藤園の社内ベンチャー制度を利用し、自身の「ジャスミン愛」を形にして、フレグランスブランド『Crazy Jasmine』(※以下、クレイジージャスミン)を立ち上げました。「お〜いお茶」という王道の人気商品を持つ大企業の中で、向田さんはどのように自身の尖った「好き」を事業化させたのでしょうか。新規事業を成功させた歩みから、組織の中でやりたいことを実現させるためのヒントを探ります。

純粋な気持ちと、ジャスミンへの深い愛から始まった挑戦

——『クレイジージャスミン』の香水、本当に良い香りですね。伊藤園さんのジャスミン茶の香りがそのまま閉じ込められているようです。

ありがとうございます。伊藤園のジャスミン茶『Relax JASMINE』って、緑茶にジャスミンのお花を重ねて香り付けをしているんですが、香料無添加で天然のお花だけで作っているんです。その香り付けの回数が多くて、だからあんなに良い香りがするんですよ。作り続けてもう40年くらい経つ製品ですが、他にはない香りですよね。

——本当に香りが全然違いますよね。向田さんは元々、ジャスミン茶『Relax JASMINE』のデザイナーとして17年間勤務されてきたとのことですが、今回、初めて開催されたという社内ベンチャー制度に挑戦しようと思った背景について教えていただけますか?

社内ベンチャー制度の募集があったときは、マーケティング本部のデザイン制作室に勤務していました。マーケティング本部は割と新しいことにチャレンジしようという部署で、当時の本部長もすごく前向きで熱心で「みんな説明会聞きに行くよね、行こう行こう!」と。私はオンラインで参加したのですが、部署の雰囲気も手伝って、最初は「なんかおもしろそうだな」という軽い気持ちで説明会を聞きました。

——最初から「いつか起業したい自分にチャンスがきた!」といったふうに意気込んでいたわけではなかったのですね。

社長になるなんてことは一切考えておらず、最初は「なんかおもしろそう!とりあえず応募してみよう」という感じで。私が応募した際の最初のアイディアは「ジャスミンショップを作りたい」というものでした。世の中にはミントやラベンダー、バラなどに特化したお店はあるけれど、ジャスミンに特化したお店はないなと思い、ジャスミン茶が飲めて、ジャスミンの香水やボディケア商品が売っている……そんなお店があったらいいなと思ったんです。

——それほどジャスミンがお好きだったのですか?

はい。ジャスミンの花は世界に200種類以上もあると言われていて、見た目も違うんですよ。ジャスミン茶のパッケージデザインのために研究したいと思ったことをきっかけに、ジャスミンサンバックの花を自宅で育てていたんですが、咲きたての香りって本当にいい香りなんですよ。あとは、市販されているジャスミンの香水やハンドクリームも色々集めて使っていました。でも、やっぱりジャスミン以外の香りが混ざっていて「純粋なジャスミンの香りとは何か違うな」と感じることも多かったんです。

——ご自身の「好き」と「もっとこうだったらいいのに」という思いがアイデアの源泉だったのですね。いざ選考に進み、プレゼンをするとなった際にはどのような点を意識されましたか?

社内ベンチャー制度では、メンターがついて数回のメンタリングがありました。資料の作り方なども見ていただいたのですが、最終プレゼンに臨む際、メンターからは「詳細な計画よりも、強い思いが大切だ」とアドバイスをいただきました。なので、1年後、3年後、5年後の予想図は出したものの、細かい数字よりも、とにかく自分の思いを伝えることに注力しましたね。

——その強い思いは、どのようにして審査員に伝えられたのでしょうか。

実は、最初は香水で提案したわけではなかったんです。最初のメンタリングで「ジャスミンの香水を作りたいんです」と伝えたら、「それはすでに世の中にも一定程度ありますので、もう少し香りの不満点などをユーザーさんにヒアリングいただけると良いかと思います」とアドバイスをいただきました。そこでヒアリングを重ねて、香りをオン・オフできる「アロマウッドバングル」を作りました。木に塗って香りを楽しめるものです。

画像のキャプションが入ります。 出典:リンク先なども記載できる

——製品のプロトタイプを作成されたのですね!

はい。デザイナーの私はパッケージが作れるので、化粧箱に入れて試作品を作ってプレゼンに持っていったんです。そうすると、「すぐに売れそうな印象がありますね」という感じで審査員の方に見ていただけて。それが決め手になったのかなと思います。後で結果発表のフィードバックをいただいた際には「本当に強い思いが伝わるプレゼンでした」とありました。

——思いだけでなく、実際に形にする行動力が素晴らしいですね。ちなみに選考期間中はデザイナー業務とも並行されていたのですよね?時間のやりくりは大変ではありませんでしたか?

この社内ベンチャー制度は業務ではなく「自己啓発」にあたるため、業務終了後に取り組んでいました。でも、ものづくりが好きでしたし、上司から「やるなら本気でやろう」と熱く背中を押されたこともあって(笑)、「じゃあ本気でやります!」と情熱を持って乗り越えられました。周りの応援があったことも大きかったです。

商談で断られる日々から、レジ打ちまで一人で奮闘した検証期間

——2023年5月にアイデアが採択され専任化されてから、2026年5月に事業化するまでの、3年間の歩みについて教えてください。

2023年5月に新規事業部署に異動になり専任になってからは、まずバングルのプロトタイプを数十名のユーザーさんに無料で使っていただきました。数週間使っていただいた後「これを1,000円払って買いますか?」と聞き、有償でも使いたいと言ってくれた「本当のユーザーさん」の声を集めて改良を重ねました。それがある程度形になった9月に、ギフトショーに3日間出展したんです。

——そこでの反応はいかがでしたか?

多くの百貨店やライフスタイルストアなどのバイヤーさんに目を止めていただき、名刺交換をしました。「香りもいいし、バングルというのもおもしろいね」と言っていただけて、いけるのかなと手応えを感じましたね。そこから、名刺をもらったバイヤーさんにアポを取って商談に行きました。それまで商談に行ったこともなかったんですけど。

——すぐにお店での販売が決まったのですか?

それが、全然決まらなかったんです。実績もないですし、どれくらい売れるかわからない。バングルも「もうちょっとブラッシュアップできそう」とご意見をいただきました。9月から11月まで3ヶ月間くらい商談に行っても決まらず、結構落ち込んでいました。売り場が決まらないと量産もできないですし、悶々としていましたね。

——その壁をどうやって乗り越えられたのでしょうか。

悩みを上司に相談したところ、「百貨店のお客様を担当している営業部署があるよ」と繋いでくれ、すぐに営業担当の方が来てくれました。その後、池袋の店舗の店長へのアポイントを迅速に取っていただき、商談にも同行してくれました。

——社内の繋がりを活用されたのですね。

はい。店長さんからは「実績がないから難しいけど、その熱い思いには共感する」と言っていただけました。ただ、当時のバングルが質素な木でシンプルなものだったので「20代・30代がターゲットだから、もうちょっとかわいらしいバリエーションも用意できないか」とご意見をいただき、バングルに印刷をかけてバリエーションを増やし、再度商談をするために店長さんのもとへ足を運び、なんとか売り場をいただくことができました。

——念願の売り場ですね!そこからはスムーズに進みましたか?

いえ、決まって「やった!」と思ったのも束の間、レジも販売も什器の手配も、全部自分でやらなければならず、驚きました。デザイナー時代の同僚に頼んで、一緒に什器を作ってもらったりもしました。

——販売もご自身で立たれたのですか?

はい、基本的には私と、社内の女性社員にも手伝ってもらって店頭に立ちました。レジ打ちからレジ締めまで全部自分でやって。最初はレジ締めに2時間くらいかかっていましたね(笑)。休憩やお手洗いにもなかなか行けず大変でした。本来はお客様の声を聞くヒアリングが一番の目的だったのに、レジでいっぱいいっぱいになってしまい、ヒアリングどころではなくなってしまったときは辛かったです。

——想定外の細かい業務がたくさんあったのですね。それを一人で回していたとは驚きです。

今はもう15分くらいでレジ締めできるようになりましたけどね(笑)。館が変わるごとにレジのシステムも違うので覚えるのも大変でした。

配信元: パラナビ

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