・外はさらに音にあふれている
昼食を買いに、近所のからあげ屋さんへ行く。
外に出るときは、骨伝導イヤホンを装着する。
Suicaのチャージ、PayPayでの支払い、ナビアプリ、ChatGPT。
とにかく全部、聞きながら操作する。
からあげ屋さんは大通り沿いにある。
支払いはPayPay。
ここで信号が青になると、なかなか厳しい。
車の音が一気に増え、読み上げ音が聞き取りにくくなるのだ。
トラックが来たら、一度操作を止める。
予想で押すと、ろくなことが起きないのは数々の失敗で身に染みている。
金額の入力を間違える。
前の画面に戻っている。
ひどいときは、なぜかLINEの画面になっている。
後ろのお客さんを待たせてはいけない。
そう思って焦るときに限って、スマホが言う。
「リアルタイム。大谷速報……」
……大谷さん、今だけ待ってください。
見えなくなってから、確実に私は心が広くなった。
・見えている人に教えてもらったこと
この日は夕方、近所の美容室に行った。
ここのシャンプーは、私の人生で過去一番気持ちいい。
本当にうまい。
そんなリラックスしている最中、担当の方から思いがけない言葉が飛んできた。
「私、最近目の疲れを感じることが多いので、VoiceOverを覚えたいんですよね」
思いがけない一言だった。
そのときは、
「最初は少し戸惑うこともありますが、すぐ慣れますよ」
と返した。
でも後日、ふと思った。
もっと早くVoiceOverを使っていたら、私は夜遅くまで画面を見続ける時間を減らせたのかもしれない。
そこで、眼科へ行ったときに主治医にも聞いてみた。
「目の疲れを軽減するという意味では、目を使わず耳で確認するので効果はあるかもしれません」
ただし、続けてこうも言われた。
「目の疲れと目の病気の因果関係は、まだ分からない部分が多いので、なんとも言えません」
ですよね……。
やはり、過去を気にしすぎても仕方ない。
大事なのは今である。
