皆には反射で返していた
恋愛のことについて聞かれても、真面目に返したことはありません。彼女がいるかどうか聞かれれば「いないよ」と返す。それで場が回るならいいと思っていました。本気で誰かを好きだと言うのは気恥ずかしくて、うまくかわすのが俺のいつものやり方だったのです。
その返事を、彼女にだけは
集まりの帰り、駅まで2人で歩いたとき、彼女がそれとなく踏み込んできました。「じゃあ、気になってる人とかは?」。さっき皆の前で「彼女いないよ」と返したのは聞こえていたはずです。その先を、彼女は聞いてきたのでした。いつもの調子でかわせばいい。頭ではわかっていました。
けれど、彼女に渡す返事だけは、気持ちをちゃんと伝えられるそのときまで取っておきたかった。だから俺は「今はいいかな、その話」とだけ返しました。
