「人と違うほうが、安全だと思っています」
――星野さんは「人と違う見方をする」ことを、以前から大切にされてきました。
星野 そうですね。よく「リスクを取る経営ですね」と言われるんですが、自分では逆なんです。むしろ、人と同じことをするほうが危ないと思っています。
ホテルや旅館は、一度つくれば15年、20年という長い時間をかけて投資を回収していかなければならない。その間、お客様に選ばれ続けるには、他と同じでは埋もれてしまいます。
だから私は、「どうすれば違いをつくれるか」をいつも考えています。人と違うことは、私にとって挑戦ではなく、長期的に生き残るための安全策なんです。
――世間では「横並び」が安心だと考える人も少なくありません。
星野 もちろん短期的にはそう見えることもあります。でも、競争という視点で考えれば、同じ商品、同じサービスを提供している会社が増えれば増えるほど、競争を勝ち抜くのは厳しくなる。
だからこそ、競争しなくて済む場所を探す。そのための差別化なんです。私は昔から、その発想で経営してきました。
「これまでの最大の失敗は…ないですね」
――経営者として、「競争」はどのように捉えていますか。
星野 競争は好きか、と聞かれれば、好きなんだと思います。ただ、「好きだから競争する」というより、「企業は競争から逃げられない」という感覚ですね。市場にいる以上、競争は前提条件です。
――これまで経営者としての「最大の失敗」は何でしょうか。
星野 最大の失敗…そういう風に思ったことはないですね。もちろん、もっと早くできたかもしれない、と振り返ることはあります。最初の10年は軽井沢にずっといまして、あそこは一番時間がかかりました。
もっとスピード感を持てていれば違う展開もあったかもしれない。でも、その時間をかけたからこそ得られたものもある。なので、昔に戻ってタラレバの話をしても仕方ないと思ってます。
――これまでのお話を聞くと、とても合理的で慎重な経営者という印象を受けます。一方で、ご自身では「楽観的」ともおっしゃっています。
星野 そうですね。基本的には楽観的なんだと思います。もちろん心配性です。だから最悪のケースも考えます。でも、理論に基づいて戦略を立て、「これは正しい方向だ」と判断したら、あとは前向きに続ける。
うまくいかなかったときも、悔しいって思ったことはあまりないですね。次の一手がどんどん頭に浮かんできて、それを追いかけていく感じです。やめたいと思ったことはありませんし、「もう終わりだ」と考えたこともありません。
――理論があるから、未来を信じられる。
星野 そうかもしれません。「信じよう」と意識しているわけではありませんが、正しい戦略を積み重ねていけば、結果はついてくるはずだという感覚があります。理論どおりにやって成果が出ないときは、理論そのものを疑うのではなくて、理論どおりにやってないんじゃないかと疑う。だから、必要以上に悲観することはありません。
文/集英社オンライン編集部
後編 「会社は社長のものではない」星野リゾート代表・星野佳路が語る、“経営者が消える”組織のつくり方 に続く
【番組名】 日経スペシャル ガイアの夜明け Beyond The Story
【放送日時】 7月25日(土)午前11時30分~12時00分 テレビ東京で放送
【配信】 放送未公開部分を含む星野佳路さんの「Beyond The Story」オリジナル版や、「ガイアの夜明け」の過去放送回まで 動画配信サービス「テレ東 BIZ」なら見放題!
テレ東 BIZ:https://txbiz.tv-tokyo.co.jp/gaia

