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〈外食800円の壁〉ついにサイゼリヤが値上げ検討…それでもマックより安い? 平均客単価「66円」差にみる外食業界の異変

〈外食800円の壁〉ついにサイゼリヤが値上げ検討…それでもマックより安い? 平均客単価「66円」差にみる外食業界の異変

サイゼリヤの松谷秀治社長は7月15日の決算会見で、9月以降の価格改定を検討していると明らかにした。実施されれば、全国規模では約6年ぶりの値上げとなる可能性がある。

 

ただ、ファストフードの平均ランチ代が800円に迫るなか、サイゼリヤの国内平均客単価との差はわずか66円。マクドナルドでは値上げ後に客数が前年を下回る月も出るいっぽう、サイゼリヤは客数増が続いている。外食の価格差が縮まる今、サイゼリヤは「安く食べる場所」として、ファストフードの顧客を取り込めるのか。

客数は1割増が続くサイゼリヤの圧倒的な強さ

「庶民の味方」として知られるサイゼリヤだけに、値上げとなれば利用者への影響は小さくない。ただ、松谷秀治社長は、値上げをしても「アフォーダブルプライス内」に収める考えを示している。

アフォーダブルプライスとは、簡単に言えば、消費者が無理なく支払える手頃な価格のことだ。サイゼリヤは、ほかの外食店と比べたときの安さを保つことを重視してきた。つまり、価格を引き上げたとしても、「それでもほかの店より安い」と感じてもらえる水準を維持する方針だと考えられる。

近年は、多くの外食チェーンが相次いで値上げしている。その結果、価格を大きく変えずにきたサイゼリヤの安さが、以前にも増して目立つようになった。

サイゼリヤの2025年9月から2026年5月までの国内平均客単価は862円だった。平日には税込500円のランチも提供しているため、昼食時だけを見れば、さらに低い金額で利用している人も多いとみられる。

食事補助サービス「チケットレストラン」を運営するエデンレッドジャパンが2026年6月に発表した調査では、20~50代のビジネスパーソン600人がファストフード店で使う平均ランチ代は796円だった。前年より約1割上昇し、800円に迫っている。

調査方法や利用する時間帯が異なるため単純には比べられないが、サイゼリヤの平均客単価862円との差は66円しかない。かつては「安く、手早く食べるならファストフード」というイメージが強かったが、現在ではサイゼリヤも同じような価格帯の選択肢として意識されやすくなっている。

実際、マクドナルドでは客数の伸びに変化が見え始めている。2026年6月の客数は前年同月比で1.5%減少した。同社は2月25日、標準店舗で約6割の商品を値上げしており、3月から6月までの月ごとの客数増減率を平均すると、前年同期比で約0.1%の微増となる。

2025年は年間を通して客数が前年比で約4%増えていただけに、値上げ後の動きには注意が必要だ。ただし、2026年上半期全体では客数が前年を上回っており、現時点でマクドナルドの成長が止まったと判断するのは早い。

これに対して、サイゼリヤの客数は好調だ。2026年3月から6月まで、前年同月比で10%前後、あるいはそれ以上増える月が続いた。4か月の増加率を単純平均すると約14.4%増となる。

マクドナルドの利用者がそのままサイゼリヤに移っていると断定できるデータはない。それでも、ファストフードの価格が上がるなか、手頃な価格で食事ができ、店内でゆっくり過ごせるサイゼリヤの存在感が高まっていることは確かだ。

ファミリーレストラン化するマクドナルド

サイゼリヤは9月以降の値上げを示唆した。価格改定によって採算性が改善すれば、現在絞り込んでいるメニューの一部を復活させる余地も生まれるかもしれない。品ぞろえが充実すれば、競争力はさらに高まる。

サイゼリヤは2026年6月に肉料理の定番メニューである「若鶏のディアボラ風」と「柔らかチキンのチーズ焼き」を通常ラインナップから外した。鶏肉が供給不足になっていることによる措置だという。

サイゼリヤはメニュー数を絞り込み、効率化を進めることで低価格化を実現してきた。豊富な品ぞろえを維持したまま、低価格で提供し続ければ、オペレーション負荷が高まって「安かろう悪かろう」という形で、ブランドイメージを損ないかねない。人気メニューに集中することでクオリティも守ってきたのだ。

しかし、「若鶏のディアボラ風」のような定番肉料理がグランドメニューから姿を消す影響は大きいはずだ。サイゼリヤは早期販売再開に向け、原材料の安定調達に努めていると発表している。一部商品の値上げによって原材料費に充てられる金額が大きくなれば、食材の調達環境は改善する可能性もある。

定番商品の復活によってメニューの選択肢が広がれば、価格だけでなく、品ぞろえを含めたコストパフォーマンスの高さも意識されるようになる。目当ての商品がなくなったことで来店頻度を落とした顧客を、呼び戻す効果にも期待できる。

サイゼリヤが重視するアフォーダブルプライスという戦略は、かつてマクドナルドを象徴するものだった。しかし、現在のマクドナルドは「バリューフォーマネー」へと傾いているように見える。

バリューフォーマネーとは、支払った費用(マネー)に対して、どれだけ価値の高い成果(バリュー)を得られたかを測る費用対効果のことだ。

つまり、顧客が感じる価値をベースとして、価格を設定するものだ。原価や競合の価格ではなく、顧客にとって支払う価値があると感じてもらうことを重視する。

足元で強化しているのが店舗体験の向上である。モバイルオーダーや事前決済などデジタルの活用で待ち時間を減らし、クルーが席まで食事を運んでくれるようにもなった。朝・昼・夜向けのメニューは充実しており、スイーツにも力を入れている。マクドナルドの店舗体験はファミリーレストラン化しているのだ。

マクドナルドは「バリューフォーマネースコア」(価格以上の価値があると顧客が感じる指標)を重視しており、2025年のスコアは2024年を上回っている。

マクドナルドは戦略的に従来のポジションから抜け、高価格帯へとシフトしようとしているように見える。裏を返せば、マクドナルドがかつて取り込んでいた、割安感を重視する顧客層に空白が生じることになる。サイゼリヤはその顧客を取り込める立場にあるわけだ。

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