今年も、異常な暑さがやってきた。気象庁は今年4月、最高気温が40℃以上の日を「酷暑日」と定めた。7月23日には、関東から西日本、沖縄にかけて39都府県・41地域に熱中症警戒アラートが発表され、各地で熱中症による健康被害が懸念された。
「暑さ対策をしないと、人間は簡単に死にます」
暑さ対策グッズへの関心も高まり、店舗によっては品薄となっている。7月23日放送のTBS系『ひるおび』では、「3日連続の酷暑日に要警戒」として酷暑を特集。家電量販店では、持ち運びできるハンディファンの欠品も出ていると紹介された。
いまや夏の定番アイテムとなったハンディファンだが、使い方によっては、熱中症対策になるどころか、かえって危険になることがあるという。
「猛暑・酷暑は災害です」「暑さ対策をしないと死にます」とSNSで警鐘を鳴らした、気象学者で雲研究者の荒木健太郎氏に話を聞くと、勘違いされがちな暑さ対策のひとつとして、高温の屋外でのハンディファン使用を挙げた。
「35℃以上のような高温の環境でハンディファンを使っても、温風が来てしまいます。それでは、なかなか体温を下げる効果は見込めません。熱い風を体に当て続けることで、かえって熱中症の危険性が高まることもあるのです」(荒木健太郎氏、以下同)
気温が35℃を超えるような屋外では、うちわや扇子で熱風を送り続ける場合も同様だという。
ハンディファンを使用するなら、首元などにぬれたタオルやハンカチを巻き、そこへ風を当て、水分の蒸発によって体を冷やす方法が有効だ。冷房の効いた室内で補助的に使う方法もある。
しかし、誤った使い方は後を絶たない。荒木氏が特に注意を呼びかけるのが、屋外を移動する際、ベビーカーにハンディファンやシート型のファンを取りつけて、子どもに風を当て続ける行為だ。
「天気予報で発表される気温は、地面からおよそ1.5~2メートルの、大人の顔に近い高さで観測されています。しかし、強い日差しで熱せられた地面付近は、それ以上に高温になります。地面に近いベビーカーに乗る乳幼児は、大人よりも厳しい暑さにさらされているのです。
冷房の効いている屋内ならいいのですが、屋外で、ベビーカーの高さに温風を当て続けるのはかなり危険です。日よけをつけて、できるだけ素早く涼しい場所へ移動してください」
暑さ対策グッズの使用も注意が必要
さらに、使用時の暑さ以外にも注意点がある。
「落下などで強い衝撃を受けたハンディファンは、内蔵バッテリーが破損している可能性があります。発火事故を防ぐためにも、消耗品だと割り切って買い替えてほしいです」
良かれと思って行っている対策が、知らず知らずのうちに子どもを危険にさらす可能性もある。間違った方法を取りながら、「対策はできている」と安心してしまうことが、何より危険なのだ。
そういう意味では、冷感スプレーなども冷たく感じても、深部体温を十分に下げる熱中症対策にはならない。
「肌にひんやりとした感覚は生まれても、体温を下げる効果は期待できません。冷たく感じることで、それだけで大丈夫だと思い、ほかの暑さ対策を取らなくなってしまうことが危険です」
体を直接冷やすには、活動前にシャーベット状の飲料「アイススラリー」を飲んだり、冷えたペットボトルを握って手を冷やしたりする方法も補助的な身体冷却法として活用できるという。
また、今年の夏の特徴として、特に気をつけたいのが、短期間で急激に気温が上昇したことだ。
今年は7月初旬まで、全国的に猛烈な暑さが続いていたわけではない。
気象庁の集計によると、7月1日から6日までは、全国で最高気温35℃以上の猛暑日を観測した地点が一つもなかった。しかし、21日には278地点、22日には298地点で猛暑日を観測。40℃以上の酷暑日も、それぞれ3地点、4地点に達した。
比較的暑さが穏やかな状態から、短期間で一気に危険な暑さへ変わったことになる。
「通常は、本格的に暑くなる2週間ほど前から、軽い運動や入浴を取り入れ、体を暑さに慣らす『暑熱順化』が望ましいとされています。しかし、徐々にではなく急激に暑くなると、体の適応が追いつかず、熱中症の危険性が高まります」
外回りの仕事などで、どうしても外へ出なければならない人に対して、荒木氏は「日傘は全員が使ったほうがいい」と話す。少しでも体調不良を感じたら、すぐに涼しい場所へ移動できるようにしておくことが重要だ。

