タイパの時代を制した『VIVANT』の戦略
世界観が壊れる。番宣が多すぎる。そう感じる人がいるのもわかる。だが、キャスト本人が番宣に出て、CMにも登場し、局全体で祭りを作っていく。その騒がしさや情緒のなさまで含めて、これはテレビドラマなのだという感じがする。
重厚な世界観にひたすら浸りたいなら、配信ドラマを見ればいい。だが、毎週日曜夜にみんなで同じものを見て、翌日、ああだこうだ言う。テレビに出ているタレントたちもドラマの話で盛り上がり、キャストにあれこれ質問する。
その楽しさは、やはりテレビだからこそ作れるものだ。
今は、いい作品を作れば自然に見てもらえる時代ではない。どれだけお金をかけても、どれだけ面白いものを作っても、初回を見逃されてしまえば、その熱は広がりにくい。
しかもタイパの時代、時間を無駄にしたくないから、みんな「いいもの」しか見たくない。「評判のいいもの」しか見ないという空気がある。
だからこそTBSは、世界観を守ることよりも、まず「これは超大作ですよ!」「見ないと損ですよ!」「初回を見逃せないですよ!」という空気を作ることを選んだ。その賭けには、ひとまず勝ったと言えるだろう。
『VIVANT』は、重厚で硬派なドラマではない。局全体を巻き込み、キャストを番宣に出し、キャストが登場するおちゃらけたCMも挟み、過剰なまでにはやし立てて盛り上げる。
これこそがテレビドラマ。今の地上波ドラマの勝ち方なのかもしれない。
文/ライター神山

