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「犯人の証言」は本当だったのか?…司法解剖が全臓器を調べる本当の理由

「犯人の証言」は本当だったのか?…司法解剖が全臓器を調べる本当の理由

『アンナチュラル』にハマって法医学を専攻、テレビ局に入社した卒業生

突然ですが、石原さとみさん主演の連続ドラマ『アンナチュラル』(TBS系・2018年)をご存知でしょうか。

人気脚本家の野木亜紀子さんが脚本を担当し、米津玄師さんによる主題歌「Lemon」も大ヒットした同作は、石原さとみさん演じる法医解剖医が、さまざまな死因の謎を究明していく1話完結型の法医学ミステリーです。

同年のギャラクシー賞や放送文化基金賞など計23もの賞を受賞して、非常に高く評価されたドラマですが、『アンナチュラル』にハマったことがきっかけで法医学の世界に興味をもち、医学部に入学した学生がいました。

彼女の名前をここではSさんと呼びましょう。幼い頃からテレビっ子だったというSさんは、高校生のときに『アンナチュラル』のおもしろさに夢中になり、とりわけ同作の演出を担当した塚原あゆ子さんに強い憧れを抱いたそうです。

「こんなドラマを作りたい!」と、この作品を制作したドラマ制作会社への就職を夢見るようになりました。

でもどうすればドラマ制作会社に就職できる確率を高められるのだろう? 色々と考えて高校生の彼女が出した結論は、「就職試験で医学部出身を売りにしよう」。

その後、Sさんは私が在籍する鳥取大学医学部で研究者を育成するための生命科学科に入学、最終学年の自由選択で法医学を専攻します。

卒業研究では「ドラマと法医学~『アンナチュラル』における死体所見の検討~」というタイトルで、劇中に登場した死体がどれほど忠実に再現されているかの正誤を法医学の視点から徹底的に検証・考察し、まとめあげた異色の卒業論文を提出しました。

そんなSさんでしたが、他の同級生と同じ医学研究の道には進まず、初志貫徹してTBS系ドラマ制作会社の入社試験を受け、倍率500倍ともいわれる狭き門を見事に潜り抜けて、ドラマ制作部門の内定を勝ち取りました。

私も長らく大学教員をしていますが、法医学研究室にもかかわらず、「ドラマを卒業研究のテーマにしていいですか?」といい出した学生はSさんが最初で最後かもしれません。

ちなみに、実際に法医学を学んだ上で『アンナチュラル』を視聴したSさんの感想としては、「ドラマと現実では異なる部分も多いのだと実感した」そうですが、綿密な検証によって「ドラマは死因の特定に主軸を置き、ストーリーを作成している」というフィクションならではの強みも理解できたとのこと。

テレビ業界で着実にキャリアを積み上げたSさんは、連続ドラマ『海に眠るダイヤモンド』で憧れの塚原あゆ子さんと一緒に仕事をするという形で夢を叶えました。現在では次なる夢を叶えるため、転職して別の業界で活躍しています。

最短ルートで教授になりたい人は法医学が穴場?

ところで、若いうちに「医学部の教授になれる」のも法医学者のメリットかもしれません。

医学部で教授になれる年齢は、一般的には50歳前後が多いといわれています。しかし、法医学者の多くは、40代前半までに教授に就任しています。理由は単純、人が少ないからです。

現在、日本国内には約150人の法医学者がいますが、うち教授は医学部の数と同じ82人。「医学部に進んで、とにかくなんでもいいからさっさと教授になりたい」という戦略をもって割り切れる人であれば、法医学は穴場です。

また、法医解剖医のなり手が少ないのは日本に限らず、アメリカ、欧州諸国など世界共通の傾向です。やはり、「医師を目指す以上は、臨床医になりたい」と考えるのが圧倒的多数派でしょう。

一般臨床医と比較すると、大学教員である法医解剖医は、国立大学では準公務員のような立ち位置になります。そのため、給与面では一般病院で働く専門医のほうが圧倒的に高い。
診療科によっても給与は異なりますが、医師は病院でのスポット勤務という形での助っ人が可能です。その給与が固定給にプラスされるため、高収入を得やすい。

ところが、警察と連携して動く法医解剖医の場合は、「スポットで解剖に行きます」という仕組みがなかなかありません。解剖も日に何体も上乗せできるものではありませんから、平均年収で比較したらほかの臨床医より低めになることは、デメリットといえるかもしれません。

文/飯野守男  写真/shutterstock

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