映画館では、たびたび鑑賞マナーをめぐる議論が巻き起こる。夏休みの大ヒット作をきっかけに、今回話題となっているのは、子どもも多く訪れる映画の上映中に、どこまでの声や行動が許されるのかという問題だ。
「子ども向けの映画は静かにするマナーはありません」
7月24日に公開された『映画ちいかわ 人魚の島のひみつ』が、記録的なスタートを切った。
ナガノ氏による人気漫画『ちいかわ』初の劇場版で、原作の長編エピソード、通称「セイレーン編」を映像化した本作。全国447館で公開され、初日から3日間で観客動員約150万人、興行収入22億円超を記録した。
子どもから大人まで幅広い人気を集める『ちいかわ』だが、その大ヒットの裏で議論となっているのが、映画館での鑑賞マナーだ。
公開後にSNSでは、周囲の観客の私語や物音によって映画に集中できなかったという体験談が相次いだ。
「上映中ずっとしゃべっている子どもがいた」「後ろから何度も座席を蹴られた」といった声のほか、「話し続ける子どもと、それを注意しない保護者が複数組いた」と投稿する人もいた。
こうした体験談に対しては、「子どもは上映前に出るマナーが守れるようになってから来てほしいし、守れない子を親は叱ってくれ……」「大人しくできない子はまだ映画館早いってことでしょ?」など、子どもや子連れ客に厳しい意見が寄せられている。
映画館での私語などが問題となった場合、通常はこうした批判が大勢を占める。しかし、今回は異なる意見も少なくない。
「子ども向けの映画に静かにするマナーはありません」
「子連れがうるさかったら大人なんだからこっちが時間ずらして見るしかなくないか?」
「子ども向けでやってるのに、その映画に大人が朝とか昼に行って子どもが迷惑って怒ってるのアホなんだよなあ。余程のことがない限りは我慢しないといけないのは大人側だ」
子ども向け映画を鑑賞する以上、大人側もある程度は子どもの声や行動を受け入れるべきだ、という主張だ。
本作は確かに映倫によって、年齢にかかわらず誰でも観覧できる「G区分」に指定されている。だがそれだけで、『映画ちいかわ』は、「子ども向け映画」といえるのだろうか。
「泣いてもOK」『映画アンパンマン』の特別上映
同じくG区分に指定された2026年公開の『映画 それいけ!アンパンマン パンタンと約束の星』では、幼い子どもの「映画館デビュー」を想定し、公式サイトで「大きな声で笑っても、泣いても、途中退出しても大丈夫」と案内している。
上映中の照明は明るめで、音量もやさしく設定され、歌ったり踊ったりして親子で楽しめるパートも用意され、明確に同作を子ども向け作品と位置付けている。
ただし、こうした上映方法が適用されているのは極めて稀であり、そもそもG区分とは、年齢による観覧制限がないことを示すもの。「子どもを主な対象とした作品」という意味ではない。
実際、2026年公開作では、『映画ドラえもん 新・のび太の海底鬼岩城』『映画クレヨンしんちゃん 奇々怪々!オラの妖怪バケ~ション』『映画 それいけ!アンパンマン パンタンと約束の星』といったファミリー向け作品だけでなく、香港の葬送儀礼や死生観を描いた『旅立ちのラストダンス』や、孤独な老婦人と母を亡くした学生の交流を描く『エレノアってグレイト。』もG区分となっている。
つまり、G区分であることだけをもって、『映画ちいかわ』を子ども向け映画と断定することはできないのだ。
『ちいかわ』は、かわいらしいキャラクターから子どものファンも多い一方、「セイレーン編」には不穏さや恐怖を感じさせる展開もあり、大人のファンからも支持されている。この作品の位置づけの曖昧さが、今回の議論をさらに複雑にしている面もありそうだ。
とはいえ、「子どもも見ることができる作品」と「子どもが声を出してもよい上映」は同じではない。
大手劇場は公式サイトで、上映中に控える行為として、スマートフォンなど光る機器の使用、おしゃべり、前の座席を蹴ること、写真撮影や録音・録画などを挙げている。
では、子どもの来場が多い作品でも、通常上映ではほかの作品と同じマナーが求められるのか。また、上映中の私語や物音によって鑑賞に支障を感じた場合、観客はどうすればよいのだろうか。

