落雷事故で変わった“生き方”
事故をきっかけに登山から距離を置くようになった仲間もいた。妻から「もう登山には行かないでほしい」と言われ、やめた人もいるという。一方、太田さん自身は、その後も登山を続けている。
「事故以降、登山やゴルフなどで開けた場所へ行くときは、天気予報や雨雲レーダーをこまめに確認するようになりました。山の天気は午後に崩れやすいので、天候が悪くなる前に下山できるよう、時間や行程も意識しています。
雨雲が近づいてきたときにすぐ逃げられるよう、山へ行く前に避難小屋の場所も確認しています。事故に遭う前は、雷が自分に落ちる可能性まで考えていませんでしたが、今は最悪の状況を想定して行動するようになりました」
太田さんは事故後、人体に直接雷が落ちる「直撃雷」だけでなく、木などに落ちた雷が近くの人へ飛び移る「側撃雷」があることを初めて知ったという。
「雨が降ると木の下で雨宿りをしたくなりますが、木に落ちた雷が人に飛び移ることもあります。キャンプ中に雷が鳴った場合も、テントやタープにとどまらず、建物や車へ避難した方がいいと思います」
実際、気象庁も雷鳴が聞こえるなど、雷雲が近づいた際は、鉄筋コンクリートの建物や自動車などへ速やかに避難するよう呼びかけている。
「落雷に遭う確率は、ものすごく低いと思います。でも、実際に僕の身には起きました。自分には起こらないと思わず、早めに安全な場所へ移動してほしいです」
一方、事故を経験したことで、生き方にも変化があったという。
「落雷に遭ってよかったとは思いません。ただ、人生では何が起こるか分からないと実感しました。雷に打たれるという、確率的にはほとんど起こらないことが実際に自分の身に起きた。それなら、実現する可能性が少しでもあることには、まず挑戦してみようと思えるようになりました。以前よりも、物事を前向きに捉えられるようになったと思います」
ゲリラ雷雨が相次ぐ今夏、落雷は決して他人事ではない。太田さんは無事に下山できたが、同じような状況で誰もが助かるとは限らない。例年以上のゲリラ雷雨が予想される今年、落雷を「めったに起きない事故」と軽視せず、自分の身にも起こり得る危険として備える必要がある。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班 写真/shutterstock

