長野県にある「さやか星小学校」と「サムエル幼稚園」に、この夏、ウクライナ政府の教育関係者や医師団が公式に視察へ訪れました。戦禍のなかで教育環境が大きく変化したウクライナが、日本の教育に注目したというニュースは、多くの人にとって意外に感じられるかもしれません。
今回、訪問先として選ばれた理由は、一人ひとりの理解度や個性に合わせて学び方を変える「パーソナライズ学習」をはじめ、不登校やいじめ防止、誰もが安心して学べる学校づくりなど、独自の教育実践にあります。また、視察当日は、子どもたちが歓迎のメッセージや歌で訪問団を迎え、教育を通じた国際交流の場にもなりました。
今回は、世界が注目した教育の特徴とともに、学校法人西軽井沢学園が目指す学びの形や、子どもたちが生み出した心温まる交流についてご紹介します。
世界が注目したのは「一人ひとりに合わせる学び」のかたち

今回の視察で特に注目を集めたのが、さやか星小学校が実践している「パーソナライズ学習」です。一般的な学校では、同じ学年の子どもたちが同じ内容を同じペースで学ぶことが多いですが、同校では一人ひとりの理解度や得意・不得意に合わせて学習内容や進み方を調整しています。それぞれの子どもに合った学び方を大切にすることで、自分のペースで着実に力を伸ばせる環境づくりを目指しています。
その学びを支えているのが、デジタル技術の活用です。日々の学習データを蓄積・分析し、その子に合った課題や学習内容を取り入れることで、「もっと挑戦したい子」は先の学年の内容へ、「じっくり理解を深めたい子」は無理なく学びを進められる仕組みになっています。開校からわずか2年で独自のデジタル教材「デジロク」は400種類を超え、一人ひとりに寄り添う学習環境を支えています。
こうした教育モデルは、日本国内だけでなく海外からも関心を集めています。今回視察に訪れたウクライナ政府訪問団も、多様な背景を持つ子どもたちへの教育だけでなく、戦争の影響で十分な学習機会を得られなくなった子どもたちの教育再建にも生かせる可能性があるとして、高い関心を示しました。世界が注目したのは最新のデジタル技術そのものではなく、それを活用して一人ひとりの可能性を引き出そうとする教育の考え方だったのかもしれません。
「誰一人取り残さない学校」を目指す教育システム

さやか星小学校とサムエル幼稚園が大切にしているのは、「できないこと」を指摘するのではなく、「できること」を一つずつ増やしていく教育です。その土台となっているのが、子どもの行動や成長を科学的な視点で捉える「行動分析学」の考え方です。一人ひとりの様子を丁寧に見ながら、その子に合った声かけや学習方法を取り入れることで、自信や意欲を育てる取り組みが続けられています。
さらに、日々の学習や学校生活の様子をデジタル技術で記録・分析し、それぞれに合った支援へつなげていることも特徴です。学習につまずきがある子は無理なく理解を深められるように、得意な子はさらに発展的な内容へ挑戦できるように工夫されており、「落ちこぼれ」も「浮きこぼし」も生まない環境づくりを目指しています。子どもたちが自分らしく学び続けられるよう、一人ひとりに寄り添う姿勢が教育全体に息づいています。
こうした取り組みは、安心して学校生活を送れる環境づくりにもつながっています。さやか星小学校とサムエル幼稚園では、開校・開園以来、不登校(長期欠席)児童ゼロを継続しているほか、学校独自の「いじめ防止3Rプログラム」や学校全体で取り組む支援体制を整備しています。また、教職員だけでなく保護者向けの研修も定期的に実施し、学校と家庭が連携しながら子どもたちを支える仕組みづくりにも力を入れています。今回の視察では、こうした教育システムや成果についても紹介され、多くの質問や意見が交わされました。
