25-26シーズンの「Hakuba Valley」10スキー場の来場者数は192.5万人と、過去10シーズンで最多を記録した。世界中のスキーヤー・スノーボーダーが集う国際的なマウンテンリゾートとして進化を続け、勢いに乗り続ける「Hakuba Valley」が主催するトークイベントが昨年に続いて都内で開催された。
今回のゲストは、ともにHakuba Valleyを拠点に活動するプロスキーヤーの近藤心音と、プロスノーボーダーの岡本圭司。
白馬を一言で表現すると、岡本が“多様性”、近藤は“美しさ”だと言う。世界を舞台に戦ってきた2人がその魅力を語った。
プロスキーヤー・近藤心音
6月に競技生活からの引退を表明したばかりの近藤にとって、本イベントは引退後初のオフィシャルイベント。白馬で生まれ育ち、「Hakuba Valley全山共通シーズン券」を利用して滑り込み、オリンピックの舞台まで駆け上がった。
岩手県出身の父と東京都出身の母がスキーをきっかけに白馬へ移住。スキーデビューはエイブル白馬五竜のいいもりゲレンデ。嫌がって泣くどころか、スキーを履いたまま立って寝ていたというエピソードも。

「どんな環境でも何かしら頑張っていたい性格なので、もし東京で生まれていたら、都会でキャリアウーマンになっていたかもしれません」
そう話す近藤だが、世界中の雪山を滑ってきたいまだからこそ、Hakuba Valleyは特別な存在だという。
「もちろん世界中に魅力的なスキー場はたくさんありますが、帰ってきたいと思う場所は白馬ですね」
生まれ育った場所だけに、 “観光地”と言われても、以前はあまり実感がなかったそうだ。しかし、免許合宿で知り合った友人が、免許を取りたてにもかかわらず、冬の白馬まで遊びに来てくれたこともあり、「それくらい魅力のある場所なんだ」と改めて感じ入った。その際は、ホームゲレンデでもあるエイブル白馬五竜へ案内したとのこと。
Hakuba Valleyでの思い出の場所として挙げたのは、トレーニングで毎朝通った「白馬大橋」。早朝の往復ダッシュも、「橋から見える景色が好きで続けられた」と振り返る。

好きなスキー場については、原点でありホームであるHakuba47の「47PARKS」を挙げた。LINE Cの降り場とルート3の入口は絶好の撮影スポット。

一方で、競技生活中は夏はオフトレ、冬は海外遠征が続き、白馬を“暮らす場所”として楽しむ余裕はなかったという。12年間の競技人生に区切りをつけた理由については、
「スキーを嫌いにならないために、好きなまま終わりたいと思いました。前向きな決断です。アフタースキーは疲れて寝るだけだったけど、これからはカフェや温泉にも行って、いろんな人に会って話して、もっと白馬を知っていきたい」
と語る。そんな彼女は意外にもインドア派で、貴重なオフの日には、カフェや自宅でのんびりすることが多いようだ。

現在は、妹のサポート活動をしながら、怪我のリハビリ期間中のインストラクター経験を活かし、次世代育成の新たなプロジェクトにも挑戦している。
「もっと上手くなるために、教えることを通じて貪欲に学んでいきたい。将来は、白馬に大きな窓やベランダのある家を建てたい」
競技者として世界を見た近藤は、新たな人生のスタート地点で、これからHakuba Valleyで見ていきたい景色がすでにはっきりと見えているようだ。
プロスノーボーダー・岡本圭司
夏は神戸、冬はHakuba Valleyを拠点に、約20シーズンを過ごしてきた岡本圭司。北京、ミラノ・コルティナと2大会連続で冬季パラリンピックに出場。選手生活として一区切りついたところで、「ライダーとしては今後はより自由にやろうと思ってます。今までは転戦ばっかりだったので、これからずっと白馬にいれるなんて、もう何して遊ぼうかとワクワクが止まらない」と新たなシーズンへの期待をのぞかせる。
19歳でスノーボードに出会った岡本は、就活のタイミングで本格的にスノーボードへ打ち込むことを決意し、ニュージーランドへ留学。現地で出会った友人であり、今ではライダーとしての無二の親友・小池学から「日本一のパークがある」と誘われ、白馬行きを決めた。入り口はHakuba47の「47 PARKS」。

Photo:高橋とんこ(@tontontonko345)
白馬村の第一印象は、“イケてる田舎”。“別世界”とも表現しながら、誰でも受け入れてくれるウェルカムな雰囲気があるという。
「白馬でなければプロになっていなかったと思う。厳しくも的確なアドバイスをくれる、白馬のローカルライダーたちに鍛えられた。当時は好きではなかったフリーランを磨いたことが、今につながったと思う」


そう振り返る岡本にとって、Hakuba Valleyの魅力はとても語り尽くせない。その一つが、まずは人と山の多様性だ。
「たくさんの選択肢のなかから、その日のベストを選べるのが良い。単体で好きなスキー場はありますが、エリアとしての総合力は圧倒的。Hakuba Valleyの良さを知ると、ほかは考えられないですね」
自身の主戦場である「47PARKS」については、パークカルチャーを支える立場から、今後の展望も語った。
「どんな天気や雪質の日でもクオリティが高く、僕にとって外せない存在です。マンモスマウンテンやLAAXなど、世界の有名リゾートには必ず良いパークがある。雪不足でも楽しめる場所として、日本を代表するパークとして、業界を引っ張っていきたいですね」

Photo:高橋とんこ(@tontontonko345)
「コブもカービングも、地形もパークも、何でもできる。悩んだらホームの五竜・47に行く」と言いつつ、ほかのエリアにも、それぞれ異なる魅力があるという。
「行くたびにワクワクするのが栂池のツリーランエリア。自分的には一番面白いです。他にも通好みなら白馬乗鞍、カービングなら五竜のアルプス平。岩岳は地形が楽しいし、クリエイティブな取組も面白い。そして、フリースタイルパークは圧倒的に47と栂池が日本一のクオリティだと断言できます。フリーライドパークも五竜のGORYU WAVESや八方のNATURESという場所があり、白馬に来たら、どんなパークでも選び放題なのが、他のエリアにはない魅力です」
八方尾根については、「格式高いイメージで、“八方が滑れれば”といった登竜門的存在。斜度があって減速しにくいので、ハイシーズンだけでなく春でもおすすめ」
初心者には、緩斜面が多い白馬さのさかや鹿島槍をすすめる。バックカントリーについては、アクセスの良さ に加え、地域に根付く山の文化も魅力だという。
「リフトアクセスなので、ハイクが長すぎず、入りやすい のが魅力です。安全のためのルールを教えてくれる素晴らしいローカルの先輩たちがいて、環境整備の意識も高い。しっかりと知識とルールを学んで、白馬ならではの最高の景色と斜度を楽しんでほしいですね」

感動的な瞬間を体験するためなら、努力も惜しまない。降雪後には“8ゴン”(8時のゴンドラ)を合言葉に、朝一番のゴンドラは絶対のルール。
「朝一の空気感が好き。例えば1日券が8,000円なら、最初の1本だけで6,000円の価値があると思う」
時間帯によっても表情を変えるHakuba Valley。季節では、すこしずつゆるやかな雰囲気になる春が好きだという。これは近藤も同じで、持ち技はすべて春スキーで初めて成功させたそうだ。ゴールデンウィーク以降も滑れるスキー場もある一方で、約5か月でスノーシーズンを終え、その季節ならではの別のアクティビティを楽しめる。そのバランスがちょうど良いという意見には、多くの参加者もうなずいていた。
オンピステ・オフピステともにバリエーションが豊富なだけでなく、白馬は家の前でも雪遊びができる。暮らしのなかで自然と雪やスポーツに親しめることも、「Hakuba Valley」の魅力だ。


また、田舎特有の閉塞感がなく、季節とともに人が入れ替わる、多様で開かれたコミュニティも魅力だという。
「どこにいっても仲間がいる。居酒屋で情報収集をしたり、ローカルネットワークを生かして翌日の行き先を決めたりすることも多いですね」
天候や降雪、時期などから人の動きを先読みし、混雑していないスキー場を当てる。そんな戦略的な楽しみ方も教えてくれた。

Photo:高橋とんこ(@tontontonko345)
119のコースに、季節、時間帯、雪質、そして滑り手の成長が加わることで、楽しみ方は無限に広がっていく。
「上手くなると、同じコースでも全然違う新しいラインが見えてくる。滑り込むほどアプローチできる場所も増えていく。それを毎年感じられるくらい成長させてくれるのが白馬なんです」
バレー券を使いこなす常連になっても、“滑り尽くす”ことはない。滑るほどに新たな発見がある。その奥深さこそ、「Hakuba Valley」の魅力なのかもしれない。
