『映画クレヨンしんちゃん』は「袋小路」に来ているのかもしれない
それよりも大きな問題は、やはり全体的な物語運びがやや類型的で、種々のイベントを段取りよくこなしているような印象が否めないことだろうか。それこそが「置きに行った」と思ってしまう最大の理由であり、『映画クレヨンしんちゃん』というシリーズが無難を通り越して、いよいよ「袋小路」までやってきた印象もある。
ただ、その無難さの中で、物語はちゃんとまとまっているし、共生と相互理解のメッセージは子どもの教育上とても良いものであることは間違いない。袋小路でありつつも、その「真っ当さ」に行き着いたことは支持したい。
何より、2023年の『しん次元! クレヨンしんちゃん THE MOVIE 超能力大決戦 〜とべとべ手巻き寿司〜』と、2024年の『オラたちの恐竜日記』は、筆者を含む大人から激烈な酷評が届いた作品であり、子どもに見せたくないレベルの倫理的な問題があった。劇場版で初めて監督と脚本を手がける者たちの人選は「挑戦」だったのだろうが、はっきり失敗していた。
また、昨年2025年の『超華麗!灼熱のカスカベダンサーズ』は、その前2作での厳しい評価を踏まえたためか、橋本昌和監督と脚本家のうえのきみこを呼び戻していた。だが、こちらも残念ながら世評は伸び悩んでいたため、やはり迷走から抜け出せたとは言い難い。
また、今回『オラの妖怪バケ~ション』の渡辺監督と脚本を担当した中村能子は、劇場パンフレットでお互いに「しんのすけはとにかく複雑で難しいキャラクター」「しんのすけらしくどうやってずらしてユニークに面白く持っていくのかを悩んでいた」と語り合っており、実際に出来上がった映画も「真っ当な物語を構築する生真面目さ」の中に「しんのすけらしさ」を入れ込むことに苦慮している印象があった。
それは作り手の誠実さそのものとも言えるが、結果的に『オトナ帝国』や『戦国大合戦』のような、突出した面白さには届いていないのは事実だ。この「真っ当」「無難」を安易に続けてしまうと、『映画クレヨンしんちゃん』シリーズは訴求力を失ってしまうかもしれない。次回作は大きな挑戦をしつつ、『花の天カス学園』のように過去作の呪縛からも逃れた、革新的な作品を期待したい。

