今回取材したのは、横浜の関内駅や日本大通り駅が最寄りな『LANDER』。横浜スタジアムや大さん橋、中華街や赤レンガ倉庫もすべて徒歩圏内の好立地だ。

自家製サンドを求めてスケートボード好きが集う
関内か日本大通りの駅から徒歩約5分、横浜スタジアムのすぐ側に『Lander(ランダー)』はある。7坪ほどの店でオーナーの陸広伸さんが提供するのはプレスサンドイッチ。硬めバゲットをギュッとプレスして香ばしさと食感を足した、ホットサンドだ。
ローストビーフやチリコンカンなど、具材はほぼすべて自家製。しかもどれもしっかりと旨い。
「前に勤めていたレストランのシェフにレシピ作りを手伝ってもらいましたから。そのおかげです」
加えて店の特徴は、全国からスケートボード好きが集う、知る人ぞ知る人気店であることだろう。
「近くのビジネスパーソンやベイスターズファンの方にも大勢来てもらえていますけどね。僕自身、約40年ほどスケートボードに乗っていますし」と陸さんは続けた。
「この店はたくさんのスケーターと、いろいろなアーティスト、そして同業の仲間のおかげで、6年も続けてこられたから」
自分たちの遊び場は自分たちで守ってきた
横浜生まれ横浜育ち。ゲームやマンガが全盛期だった世代だが、陸さんはサッカーや缶蹴りなどの外遊び好きな少年だったという。
「近所の兄ちゃんと暗くなるまで遊ぶ。そんなのが好きでしたね」
地続きにスケートボードもあった。80年代後半の新横浜あたり。中学生だった陸さんの周りには、ストリートのスポットをガンガンに滑る先輩たちがいた。
「とにかくカッコよかったので、いつも付いて回っていました」
カッコよかったのはトリックやファッションだけじゃない。某所の駐車場でこっそりスケートをしていたが、必ず駐車場で誰かが捨てたゴミを皆で拾って掃除して使った。すると駐車場のスタッフが粋に感じ、陸さんたちの“こっそり”を見逃してくれたのだ。
「当時はまだスケートボードは目の敵にされがちだったから。『自分らの遊び場は自分らで守ろう』ってスタイルもカッコよくて」
良きバイブスは良き人たちを引き寄せるものだ。陸さんの周りにはプロも学生も芸能人も、カッコいいスケーターが垣根なく集った。高校卒業後も現場仕事で働きながらスケートの日々。カナダやLA、SFまで飛び、ローカルと滑る旅をしたこともあった。スケート一色だった陸さんに、別の色が混じりはじめたのは帰国後だ。仕事先の現場がカフェの内装だった。
『飲食の仕事、面白そうだな』
考える前に飛ぶのが、やんちゃなスケーターの心意気だ。
すぐ横浜駅近くのレストランでバイトをかけもち。誰でも気負わず仲良くなれる“スケートボードバイブス”が気に入られ、元有名ホテルで修行したシェフ、のちにレシピづくりを手伝ってくれる彼に、料理の基本から学んだ。
「面白かった。練習すればするほど腕があがる。スケートボードと同じ感覚でした」
その後はレストラングループ『キハチ』の社員に。チャイナダイニングから銀座のフレンチまでホールの経験を積んだ。大手を選んだのは「独立を視野に経営を学びたい」と考えていたからだ。ただ「どんな店か」は見えていなかった。
「アメリカのようなオープンな雰囲気の小さなカフェを、程度は頭にあった。ただ何か弱かった」
最後のピースはNYで見つける。その頃に行った新婚旅行でマンハッタンをそぞろ歩く中、ふらっと入った店がやたら美味かった。
「カリッと焼いたプレスサンドイッチでした。ピンと来た。スケーターが片手でも食べやすいし」
その後十数年かけて準備した。場所は不動産業のスケーター仲間のツテで関内の元生花店を見つけた。内装工事もスケートボードの職人とつくり、床にはパークを匂わすデザインを施した。店名は自分の名、陸(ランド)をもじった。
「あと『ランダー』は月面着陸船の意味もある。カッコいいなと」
2019年、こうして陸さんはオーナーになった。ちょうど横浜港にダイヤモンド・プリンセス号が停泊する半年前だった。