「村上はメジャーの速球には対応できない」
昨オフ、多くのMLB球団がそう判断した。しかし2026年後半戦を迎えた今、ア・リーグ新人王(ROY)レースの最前線に立っているのは、その村上宗隆だ。23本塁打、OPS.927、そして97マイル(約156キロ)超の速球に対するOPSはMLB全体トップの1.249。弱点と断じられた速球を、なぜ彼はメジャー最大の武器に変えてしまったのか。
村上宗隆が新人王レース首位 23本塁打・OPS.927が示す現在地
MLB.comが39人の専門家を対象に行った2026年ア・リーグ新人王の初回モック投票で、村上宗隆が20票の1位票を獲得してトップに立った。
現時点でルーキー全体1位となる23本塁打、長打率.547、OPS.927。数字だけ見れば、今季のMLBで最も恐ろしい新人打者と言っていい。
それが今オフ、多くのMLB球団から大型長期契約を見送られた男の記録だというのだから、野球のおもしろさはわからない。ホワイトソックスとの契約は2年3400万ドル(約53億円)。前年102敗を喫した最下位球団が結んだその契約は、「未来の主砲への大型投資」というよりは「ハマれば儲けもの」という低リスクな獲得に近い評価だった。
「速球が打てない」評価はなぜ広まったのか
ヤクルト時代に56本塁打・三冠王・リーグMVPを2度獲得。実績だけなら最上級の評価を受けてもおかしくなかった。
しかし、MLB各球団のスカウティングレポートには共通してひとつの懸念が記されていた。それが「高速球へのコンタクト率の低さ」だ。日本時代の村上のゾーン内コンタクト率は72.6%で、MLB基準に照らし合わせれば最下位争いの水準。「速くて動く球を投げ続ければ抑えられる」というのが、メジャー幹部たちの共通認識だった。
あるナ・リーグ球団幹部は、ESPNの取材にこう漏らしている。
「みんなの評価が間違っていた。速球に対するゾーン内のミスを心配しすぎたんだ。彼の優れた出塁能力を十分に評価できていなかった」
