ドラッグストアの食料品強化は、物価高に苦しむ消費者にとって心強い存在となっている。業界大手のウエルシアは食品の売上比率を従来よりも10ポイント以上高めることを目標とした「ドラッグ&フード型店舗」への転換を進めている。しかし、経営面では難しい課題も見えてくる。
食品の物価高を味方につけるドラッグストア
ウエルシアが「ドラッグ&フード型店舗」の展開をスタートしたのが2025年8月だ。茨城県のつくば市と稲敷市の店舗をリニューアルした。野菜やくだもの、精肉などの生鮮食料品から冷凍食品、総菜まで取り扱う食品の幅は広い。
特にスーパーマーケットが強みを持っていた生鮮食料品に力を入れている点は大きい。ドラッグストアは「何でもそろう店」への転換を進めている。
帝国データバンクによると、8月の飲食料品値上げは2311品目。2026年1~11月に予定・実施が判明した値上げは1万8347品目で、調査開始以降5年連続で年間1万品目を超えている。
物価高の進行により、割安で食品が購入できるドラッグストアは集客面で優位に立ちやすい。ウエルシアの2026年3月~6月までの客数は前年同期間比で1.3%の増加だった。
ウエルシアの狙いは、食品をきっかけに来店した顧客へ医薬品や化粧品、調剤を購入してもらう「ついで買い」の促進だ。
ドラッグストアは食品の粗利率を相対的に低く設定し、医薬品や化粧品、日用品で稼ぐビジネスモデルだ。ウエルシアの食品の売上総利益率(粗利率)は約18%だ。経営統合したツルハも同水準である。
いっぽう、スーパーマーケットの一般食品の売上総利益率は20%程度だ。総菜は40%、青果は23%近い(「スーパーマーケット年次統計調査」)。つまり、ドラッグストアは競合のスーパーよりも価格優位性を持たせて集客力を高めているのだ。
ウエルシアもツルハも食品は集客フックであり、全カテゴリーでの売上総利益率は30%程度まで高まる。これが「ついで買い」の神髄と言える。
しかし、ウエルシアの2026年3月~5月の全カテゴリの売上総利益率は、前年同期間比で0.3%の微減だった。
ウエルシアが「ドラッグ&フード型店舗」の強化を進めて約1年が経過したものの、理想通りの相乗効果を生み出すことは容易ではないのだ。
ウエルシアの「ついで買い」戦略の難しさ
食品で集客し、高利益商品の購入を促すという戦略は、ドラッグストアの役割を大きく変えるものだ。
セールスプロモーションを展開するエクスクリエが2026年3月に実施した「ドラッグストアにおける店頭・商品施策の購買影響調査(2026年)」によると、「ついで買い」をする商品ジャンルは「お菓子・スイーツ」が62%、食品は42%、飲料が28%だった。飲食料品が上位3つを占めているのだ。
従来、ドラッグストアは医薬品やシャンプー、トイレットペーパーなどを目的に来店し、そのついでに菓子やパン、牛乳などを購入するケースが多かった。食品は従属的な位置関係にあるが、ウエルシアはこの主従関係を置き換えようとしている。
ドラッグストアの食品強化策で外せないのが、九州地盤のコスモス薬品だ。食品の売上比率はウエルシアの3割に対し、コスモスは6割に達している。ウエルシアとツルハが経営統合したこともあり、コスモスは売上規模でマツキヨココカラ&カンパニーに次ぐ3位につけた。勢いのあるドラッグストアだ。
ウエルシアの食品強化はコスモスに追従する動きのように見えるが、2社はビジネスモデルが大きく異なる。コスモスは食品そのものを主力事業と位置づけたビジネスモデルである。毎日安売り戦略を採用し、安く提供するために現金のみの取り扱いだ。ポイント還元サービスも導入していない。商品を安く提供することに全振りしていると言える。
ウエルシアは食品強化だけで勝負するわけではない。専門人材による健康サポートやWAON POINTによる顧客還元、多様な決済手段などを組み合わせ、健康を軸とした総合的な利便性を提供しようとしている。
ここで思い出したいのが、かつて隆盛を誇った総合スーパーの衰退である。総合スーパーは何でも手に入ることを武器に都市部で出店を重ねたが、やがて持ち味が失われていった。衣料品はユニクロ、家具・生活雑貨はニトリなど専門店への消費者流出が進み、小売業の専門分化が加速したためだ。

