北朝鮮にすがるところまで追い込まれたロシア
そして、兵士を送り、砲弾を渡し、ミサイルまで実戦に持ち込む国は北朝鮮しか残っていない。ロシア外交は、北朝鮮にすがるところまで追い込まれた。
ウクライナ侵攻の直後、ロシア経済は西側の予想より持ちこたえた。政府が軍需工場に巨額の金を流し、戦車、砲弾、ミサイルを造らせたからである。戦車を造ればGDPは増える。砲弾工場を24時間動かせば、雇用も賃金も増える。
だが、戦車は家にも工場の機械にもならない。前線で壊れ、次の戦車を造るためにまた金が要る。鉄も電子部品も人手も消える。国民の暮らしを豊かにする資産は残らない。軍需景気は、未来の成長を燃料にして走る景気である。
その燃料が切れ始めた。2024年の成長率は4.9%だったが、2025年には約1%まで落ちた。2026年も低迷が続き、IMFの成長率見通しは1.1%である。
石油・ガス収入は急減し、財政赤字は政府の当初目標を大きく上回る。高い政策金利は企業の投資と住宅市場を押さえつける。戦争が経済の首を絞めている。
人も金も軍需に消えていく。兵器工場が高い賃金で人を集めれば、民間企業は働き手を失う。政府が軍需を優先すれば、住宅、交通、医療、設備投資に回る金が減る。数字の上では生産が増えても、国の力はどんどん痩せていっているのだ。
兵士が要る。そこで北朝鮮軍の出番となる
ロシア経済が明日にも崩壊するわけではないかもしれない。資源があり、政府は銀行と企業を強く動かせる。だから戦争も続けられる。怖いのは、突然の崩壊ではない。売り先、資金、兵士、支援国が少しずつ減り、最後に選べる手がなくなることである。
欧州市場を失った痛手もやはり大きい。侵攻前のロシアは、パイプラインで欧州へ大量の石油とガスを送り、安定した外貨を得ていた。EUのガス輸入に占めるロシア産の比率は、2021年の45%から2025年には12%まで落ちた。原油も27%から3%未満へ減った。
近くて高く買う欧州を失い、遠い中国やインドへ、輸送費をかけ、値引きして売る。買い手が減れば、売り手は強気に出られない。
原油収入が減れば、困るのは軍だけではない。年金、地方財政、道路、学校、病院に回す金まで削られる。政府は増税と借金で穴を埋める。前線から遠い国民も、物価、高金利、税負担という形で戦争の請求書を払う。
それでも前線には砲弾が要る。兵士が要る。そこで北朝鮮軍の出番となる。

