「動画を消してほしいかも…」子どもの貴重な経験
──石田さんは『ノンタンのハッピーコンサート』の脚本・演出など、お子さん向けの仕事をたくさんされていますが、そこでいちばん大事にしていることは?
石田 教育にはならないようにしていますね。“正解”を提示するコンテンツを作る人たちは世の中にいっぱいいますけど、僕はお笑い芸人なんで、そうじゃないものを作ろうと。子ども向けミュージカルをやろうとした時に「ノンタン」を選んだのも、ノンタンがどこにでもいる子だから。自分勝手でわがまま。そういう子を説教くさくなく、ただまっすぐ描きたい。
── ケムリさんが絵本を描くときに意識したことは?
ケムリ まだ字が読めない子も手に取る可能性は意識しましたね。それこそ海外の人を笑わせるのに近いかもしれない。言葉に頼りすぎないようにしました。あと、さっき石田さんが言ったように、子どもってツッコミをするのもされるのも好きだけど、人が人にツッコんでいるのではあまり笑わないと思ったんですよ。
ツッコミの面白さそのものというよりは、自分が主体になることを楽しんでいるというか。だから、ツッコミの絵本ではあるけど、書いてあるツッコミを見て笑ってほしいというよりも、一緒にツッコんでほしいという気持ちで作りました。
石田 この絵本はケムリが書く意味があるよね。
──当事者感が大事なんですね。
石田 『ノンタンのハッピーコンサート』でも、子どもたちを舞台上に上げたり、ノンタンと一緒に遊べる空間を作ったりしています。うちの子たちも毎回観に来ているので、舞台に立つことが好きになるんですよ。すると学校の発表会とかの気合いの入り方が変わってくるんです。そういう意味でも、いろんな子に参加させたいなと思いますよ。
ケムリ すげえ。どんな気持ちで発表会に臨むようになるんですか?
石田 舞台に立ってお客さんに見られるって、やっぱ緊張すんねんて。で、その動画を見せてみたら「私だけ足が逆やから、この動画消してほしいかも…」とか言い出す。
ケムリ そういうの、普通に暮らしてたら、ない振り返りですもんね。それは素敵だな。
石田が我が子のために作るオリジナル絵本
──石田さんは、お子さんにどんな絵本を読んでいますか?
石田 僕は子どもが小さい頃に、絵本を描いてましたよ。紙芝居も。
ケムリ え、出版とかじゃなくてですか?
石田 うちの子どものためだけの、オリジナルの絵本。その姿を見せると、子どもたちも作るようになるんですよ。今もしょっちゅう作ってる。
ケムリ わー、すごいな。親の背中を見てるんだな。
石田 元々は寝かしつけで普通に絵本を読んでたんですけど、途中から自作の絵本になって、そのうち持つのも億劫になってオリジナルでしゃべり始めて。
ケムリ いいっすね。
石田 で、子どもたちがそれを真似して自分たちで物語を作り始めた。自分を登場人物にできるし、失敗してもいい。失敗した時こそ、そこにツッコミが待ってるので。「なんじゃそれ」とツッコめばみんな笑う。
ケムリ わあ、そうか。うちの子どもはまだ1歳ですけど、僕は読んでほしい本を子どもの前で読むようにしてます。本を身近に感じてほしいから、電子書籍で買っていたものを改めて紙で買い直してますね。親が読んでいる姿を見たら興味を持つと思って。
石田 それは真似すると思う。子どもって大人が何やってるかめっちゃ見てるから。
──親の姿を見て真似をするから、そうあってほしい姿を見せるということですね。石田さんはNSC(吉本総合芸能学院、吉本の養成所)で講師もされていますが、人に教えるときに気をつけていることは何かありますか?
石田 方角ですかね。自分が何をどう教えたいかじゃなく、相手がどうしたいか、その方角。NSCの子たちなら、その子がどう笑かしたいのかを見て、「だったらこうした方がいいんじゃない?」とアドバイスする。上から言っても意味がないから、横に並ぶ努力をする。
ケムリ 一方的に教えるんじゃなくて、コンサルティングみたいな感じですね。それこそ正解がないものですもんね。
石田 子どもたちに対しても同じ。子どもってイライラしたら言葉数が減ったり泣いたりするやん? そしたら何が嫌やったかを聞いて、「これができなかった」と言われたら「じゃあこういうパターンは?」と何個か出してあげる。その中からやりやすいものを一緒に探す。
──ケムリさんも、M-1チャンピオンとして周りからアドバイスを求められることが少なくないと思いますが。
ケムリ 自分がやってよかったことを伝えるくらいですね。あとは、とにかくその人の幸せを考える、ですかね……。一度、後輩から相談を受けて、その人の幸せだけを考えて答えていたら、相手が芸人を辞めたことがあります。話を聞けば聞くほど「やめる選択肢もあるんじゃないか」と思ってしまって。
石田 そのほうが幸せな可能性があるからね。
ケムリ 今そいつ公務員やってます。
石田 それは絶対、ええことしたと思うよ。
後編へつづく
取材・文/青島せとか 撮影/井上たろう

