子どもだけを責められるのか
もっとも、旅行先でスマホばかり見ているのは子どもだけではない。
観光地に着けば撮影に夢中になり、写真をSNSに投稿する。食事中にもメッセージを確認し、移動中は仕事のメールやニュースを眺める。子どもが話しかけても、「ちょっと待って」と言いながら画面から目を離さない。
大人にも思い当たる場面はあるはずだ。
親が終始スマホを触りながら、子どもにだけ「旅行中くらいスマホを見るな」と注意しても、説得力を持たせるのは難しい。子どもは、大人が口で言うこと以上に、実際にしていることを見ている。
また、家族旅行は、必ずしも子ども自身が望んで計画したものとは限らない。大人が選んだ観光地や飲食店を朝から晩まで巡り、長い移動時間や待ち時間にも静かにしているよう求められる。知らない親戚との集まりに参加し、大人同士の会話が終わるのを待つこともある。
そんな時間に、普段から親しんでいる動画やゲームを求めるのは、ある意味では自然な反応でもある。
スマホを見ているという行動だけを切り取り、「依存している」「せっかく連れてきたのに」と責める前に、その旅行が誰のためのものなのか、子どもが楽しめる予定になっているかを振り返る必要がある。
「禁止」ではなく、家族全員のルールを
旅行中のスマホ利用を見直すなら、子どもだけに制限を課すのではなく、家族全員でルールを決めることが重要だ。
たとえば、食事中と観光中は全員がスマホをしまう一方、長い移動や待ち時間には一定時間のゲームや動画視聴を認める。写真を撮ったあとは、すぐに投稿せず、帰宅後に家族で見返す。旅行先を調べるときは、一人で画面を見るのではなく、家族で情報を共有する。
使用時間だけでなく、「使わない時間」と「旅を楽しむために使う時間」を分けておけば、子どもも納得しやすい。
スマホは、旅行の思い出を奪うこともあれば、興味や会話を広げることもある。大切なのは、端末を取り上げることではなく、画面の中の世界と目の前の体験をどう結びつけるかだ。
「せっかく旅行に来たのだから」と子どもを叱る前に、大人もいったんスマホをしまい、一緒に景色を眺めてみる。家族旅行をスマホ依存から守る第一歩は、子どもへの注意ではなく、親自身の行動から始まるのかもしれない。
取材・文/集英社オンライン編集部

