■ ホームと電車の隙間
事故処理のため、電車はしばらくその場で停車しました。
隣に座っていた男性は、肩を震わせながら泣き続けていました。
あの涙は、取り乱した人間のものというよりも、まるで本当に誰かの最期を目の当たりにした人のようでした。
私は何も言えず、そのまま黙って座っていました。
やがて運転が再開され、目的の駅へ到着しました。
電車のドアが開き、ホームへ一歩踏み出した、その瞬間だった。
電車とホームの隙間。
そこから、一人の女子高生がこちらを見上げていた。
制服姿のまま、無表情で。
目だけが、じっと私を見つめている。
声は出なかった。
周囲では、何事もなかったかのように人々が行き交っている。
誰一人、その女子高生に気付いている様子はなかった。
あの男性は、事故が起きる前から、何を見ていたのだろう。
そして、私があの日見たものは、本当に事故で亡くなった少女だったのだろうか。
答えは、今も分からない。
ただ、それ以来――。
私は電車を降りるたび、ホームと車両の隙間を見ないように歩くようになった。
ごく稀に、その隙間から誰かがこちらを見上げていることがあるからだ。
あの日見た女子高生なのか。
それとも、別の誰かなのか。
それだけは、今でも確かめる勇気がない。
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國澤一誠(くにさわいっせい)
長年の怪談語りと取材活動を通して集めた膨大な怪談ファイルを持つ怪談家。
実体験や現地取材に基づいたリアルな描写に定評があり、YouTubeやトークイベントなど多方面で活躍中。
