無縁墓を防ぐため、撤去費用を助成
費用や手続きの問題から墓じまいが先送りされ、継承者がいないなどして管理が途絶えるおそれのある、いわゆる「無縁墓」は、自治体にとっても課題となっている。
こうした事態を防ぐため、独自の支援制度を設けている自治体もある。
千葉県市川市では、市営霊園の一般墓地を返還する際、墓石の撤去などにかかる原状回復費用を助成する「市川市霊園一般墓地返還促進事業」を行なってきた。制度の目的について、市の担当者は「墓地の無縁化を防ぐこと」だと説明する。
「近年は核家族化が進み、継承者がいないケースが増加しています。そのため、代々の墓よりも合葬式の墓地への需要が高まっています。継承者がいないため、管理者が元気なうちにお墓をしまおうとするのが全体の大きな流れです」(市川市の担当者)
墓じまいにかかる費用は、墓石の大きさや立地、撤去作業の難しさなどによって異なる。市の担当者によると、解体・撤去費用は1平方メートルあたり10万〜30万円ほどかかる場合があり、市川市営霊園で一般的な4平方メートルの区画では、総額が100万円を超えるケースもあるという。
「これだけの負担になるため、市の助成金が出るのであれば墓じまいを決断しよう、と考える方もいらっしゃいます」
ただし、市川市の2026年度の墓地使用料の還付と原状回復費用の助成は、予算額に達したため、5月22日で受付を終了している。早い段階で予算が上限に達したことからも、費用負担を軽減する制度への需要の大きさがうかがえる。
墓じまい後の選択肢となる樹木葬
墓じまいをした後、遺骨をどこへ移すのかも家族にとって大きな問題となる。その選択肢の一つとして注目を集めるのが、墓石の代わりに樹木や草花を墓標・シンボルとする「樹木葬」だ。
関西地方にある寺では、数年前から樹木葬の受け入れを始め、これまでに1000件以上の申し込みがあったという。同寺の担当者は、その仕組みをこう説明する。
「従来のような石の墓ではなく、この大木が墓標の代わりになります。遺骨を粉状にして埋葬するため、年数が経過すると自然に土へ還っていく仕組みです」
同寺では、複数人の遺骨を納められる25センチ四方の区画を66万円から用意している。納骨代は別途必要となるが、契約後の管理費はかからず、期限を設けずに供養するという。
ただし、樹木葬の埋葬方法や契約期間は、寺院や霊園によって異なる。遺骨を個別の区画へ納める形式もあれば、最初からほかの遺骨と一緒に埋葬する合祀型もある。一定期間を過ぎた後に合祀され、一度納めた遺骨を取り出せなくなる場合もある。
「当寺では期限を設けず受け入れていますが、他所では7年や13年など、一定の期間で区切っているところもあります」(同寺の担当者)
樹木葬を選ぶ際には、埋葬方法や遺骨を将来取り出せるかなど、契約内容を家族で確認しておく必要がある。
厚生労働省の「衛生行政報告例」によると、墓じまいなどに伴って遺骨を別の墓地や納骨堂へ移す改葬の件数は、2014年度の約8万3574件から2024年度には約17万6105件と、10年間で2倍以上に増加した。
墓を残すのか、墓じまいに踏み切るのか。そして、その費用を誰が負担するのか。4年前から続く岡田さん一家の話し合いは、今年のお盆も結論が出ないまま終わる可能性がある。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

