後藤は父親ではなく「顧問の先生」
―― 後藤は第二小隊の若者たちをまとめる、父親のような存在にも見えました。
伊藤 父親というよりは、先生ですね。顧問の先生のようなものです。
―― 本作では、後藤が父親を嫌っていたことや、南雲が父親不在の家庭で育ったことにも触れられます。ふたりの人格に、父親との関係が影響しているのでしょうか。
伊藤 そこまで深く考えたわけではありません。ただ、父親と息子、母親と娘のような同性の親子は、うまくいかないことが多いという個人的な感覚がありました。父親と娘、母親と息子は割とうまくいくけれど、同性同士はぎくしゃくする。普段から感じていたことが、無意識に出たのかもしれません。
―― 後藤は第二小隊を導くことはできても、自分自身が父親になることには向いていないと考えていたのでしょうか。
伊藤 多分、後藤は自分が父親にはなれないと思っている節があるような気がします。
「パトレイバー」は「メカもの」ではない
―― 『寿司屋の後藤』には、レイバーがほぼ登場しません。それでも読んでいると、「パトレイバー」が帰ってきたと感じました。
伊藤 最近よく言っているんですけど、「パトレイバー」はメカものではないんです。キャラものなんです。
―― 小説のなかでは新作『機動警察パトレイバー EZY』のエピソードに言及されています。また『EZY』には過去作を思わせる場面もあります。長年のファンに向けたサービスなのでしょうか。
伊藤 別にそこを狙ったわけではありません。「パトレイバー」といったら、こういう話だよね、と自分が思っているものを書いただけです。
―― 最後に、『寿司屋の後藤』の読者や、これから『EZY』を観る人へメッセージをお願いします。
伊藤 楽しんでいただければ幸いです。『EZY』は、そもそも劇場版として作ったものではなく、たまたま劇場公開されることになりました。オムニバスのように見えるかもしれませんが、最初からそういう意図だったわけではありません。「劇場版だから」と肩肘を張らずに観てほしいですね。
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「パトレイバー」シリーズの魅力は、巨大ロボットだけでなく、キャラクターに作品の外でも生活を続けているように感じられるほどの実在感があること、といえるかもしれません。それこそが長い間、ファンに愛されている理由なのでしょう。
『寿司屋の後藤』は、『パトレイバー2』で離れ離れになったキャラクターの人生を拾い直すとともに、キャラクターとファンが一緒に重ねてきた時間を描いた作品といえそうです。

伊藤和典(いとう かずのり)
1954年12月24日生まれ、山形県出身。1982年、TVシリーズ『うる星やつら』で脚本家デビュー。1988年スタートの『機動警察パトレイバー』ではシリーズ構成を担当し、『機動警察パトレイバー 劇場版2』で毎日映画コンクールの「アニメーション映画賞」「アニメグランプリ脚本賞」を受賞。『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』では、ビルボードU.S.A.の第1位を獲得。著書に、小説『機動警察パトレイバー 風速40メートル』『伊藤和典 機動警察パトレイバー脚本集』などがある。このほかに代表作として、『魔法の天使 クリィミーマミ』「平成ガメラ3部作」『.hack』『絶対少年』『MM9』など。
