ヨーロッパを流れるドナウ川で水位が急激に低下し、普段は水中に隠れているローマ帝国時代の橋の遺構が確認されました。姿を現したのは、約1700年前に建設されたコンスタンティヌス橋の基礎部分とされます。
ブルガリアの考古学者らは、めったに見ることのできない遺構をドローンで撮影し、その構造や保存状態を記録しました。かつて全長2キロを超えたという巨大な橋は、どのような姿をしていたのでしょうか。
水位低下で見えてきたコンスタンティヌス橋
2026年夏、ヨーロッパ各地を記録的な熱波が襲い、一部では深刻な干ばつも発生しました。その影響はドナウ川やライン川といった主要河川にも及び、ドナウ川では水位が異例の低さとなっています。
そんな中、思わぬ形で注目を集めたのが考古学の世界でした。ブルガリア北部のギゲン村付近では、通常はドナウ川の水中にあるコンスタンティヌス橋の基礎部分が確認できる状態になったのです。
8月4日、プレヴェン地方歴史博物館のチームは現地を調査。ドローンを飛ばして橋を上空から撮影し、橋脚などの位置や状態を記録しました。
調査に参加した考古学者パヴェル・ポポフ氏によると、場所を特定するうえでは、以前から遺構に気づいていた地元の漁師たちの情報も役立ったそうです。
ただし、「橋が完全に水面から出現した」というわけではありません。残存部分は現在も水面下約70センチにあり、水上から肉眼で確認するのは困難。正確な位置を把握したうえでドローンから見ることで、その姿がようやく分かるといいます。
全長およそ2.5キロ。ローマ帝国の技術を結集した巨大橋
コンスタンティヌス橋は、ローマ皇帝コンスタンティヌス1世(大帝)の時代に建造され、西暦328年7月5日に開通したと伝えられています。ブルガリア側の古代都市ウルピア・オエスクスと、現在のルーマニアに位置するスキダヴァを結んでいました。
その規模は驚くべきもので、全長は約2.5キロメートル、幅は約6メートル。水面から橋を支える部分の高さは約10メートルに達したとされ、古代に造られた橋としては世界でも有数の長さを誇りました。
基礎には四角く加工した石材やレンガが使われ、その上に川を渡るための木造部分が築かれていました。今回の調査では、水に強い「水硬性コンクリート」やローマ帝国時代のタイルを使った石積みも確認されています。
プレヴェン地方歴史博物館のヴォロディア・ポポフ館長によると、当時のローマ軍には軍事施設や道路、橋などを建設する専門の工兵部隊があり、高度な土木技術を持っていたといいます。巨大なドナウ川を横断する橋も、そうしたローマ帝国の技術力を背景に造られたと考えられます。
一方、この橋は軍事目的だけのものではなかったようで、市民の移動や交易、行政にも使われ、橋には関所も設けられていたといいます。ドナウ川を挟む地域を結ぶ、いわば古代の重要インフラだったようです。

