日々、仕事や勉強などに追われ、「ぼんやりと過ごす時間=悪」だと感じていないだろうか。しかし最新の脳科学では、何もしない休息時間は決して非生産的ではなく、それどころか脳の真のパフォーマンスを引き出すことが判明している。脳を活性化させ、能力を向上させる「何もしない時間」の驚くべきメカニズムを解き明かす。※本稿は、『何もしない時間 脳の隠れた機能を最大限生かす』(かんき出版)の一部を再編集したものです。
「何もしないこと」が脳の大きなメリットに
私たちは長らく、「活動のない状態」は、成功の対極にあると教えられてきた。甘やかされた、意味のない、さらには無責任な行為でもあると。
だが、人は「活動しているから成功する」のではなく、「活動していないから成功する」としたら? 休息というのは、甘やかされた非生産的な状態であるどころか、じつは人類の繁栄に必要不可欠なことだとしたら?
本記事では、「何もしないこと」が、脳にとってどれほど大きなメリットがあるのか、そして作業から解放されたときに、「脳」が、心身の健康に不可欠なネットワークを活性化させる仕組みについて見ていく。
「ぼーっとしている」ときに活性化される脳のスーパーパワー
何もしない、つまり「ぼーっとしている安静状態」のときに働くのが、「デフォルトモード・ネットワーク(DMN)」というものである。
これはニューロン(電気信号や化学信号で情報をやり取りする脳細胞)によってつくられた回路のことを指し、このネットワークの働きで、私たちは空想にふけったり、とりとめのないことを考えたり、物思いに沈んだり、未来を思い描いたりすることができる。
そしてこのネットワークは、前頭葉、頭頂葉、側頭葉を経由して脳全体へと広がっている。
大事なのは、これが活性化されるのは、私たちが目の前の作業に集中していないときに限られるということだ。つまり、脳が現在の状況に「関係のない思考」を巡らせているとき、簡単にいうと「心が自由にさまよっているとき」にのみ活性化される。
このネットワークを活性化させると、知性、創造性、社会的共感、長期的な生産性の向上が見込まれる。さらに、健康状態の改善や神経疾患の予防にも効果がある。
要するに、働きすぎた頭の「充電とリハビリ」を促す、知られざる脳のスーパーパワーなのである。この驚くべき仕組みが明らかになったいま、働き方が見直され、あらためて「考える」ことの意味が問われている。

