返信は短いのに、保存は全部
付き合って1年になる彼女とは平日に会えず、やり取りはメッセージアプリが中心でした。彼女はよく写真を送ってくれます。試着室で撮ったワンピース、クマの顔のラテアート、道端のチューリップ。俺はそのどれも端末のフォルダに保存していました。それなのに、返す言葉は「いいね」やスタンプばかり。気の利いた感想を打っては、どれも違う気がして消してしまう。外した返事で場を白けさせるのが怖くて、短い言葉に逃げていました。ワンピースの写真のときも、似合っている理由をいくつも考えて、結局「いいね」だけを残しました。
「そうなんだ」と送った日
夕焼けの写真が届いたとき、俺は取引先からの帰りの電車の中でした。「屋上から見えた夕焼け、すごくきれいだった」という言葉に、同じ空を見たかったと打ちかけて、気恥ずかしくなって消しました。結局送ったのは「いいね」という一言。疲れていたからだと、自分に言い訳をしたのを覚えています。フォルダの中の写真は増えているのに、それを本人に伝えたことは一度もありませんでした。彼女の写真が減っていることにも、そのころの俺は気づいていませんでした。
