基本は心配ないが病気のサインの場合も

通常、こむら返りは数分で治まります。痛みを早く治めたいときは、ふくらはぎの筋肉をストレッチするとよいでしょう(下項参照)。これは、こむら返りの予防にもお勧めです。

冷えも、こむら返りの引き金になります。エアコンの送風口を調整したり、足元をタオルケットなどで覆ったりするなど、工夫してみてください。

漢方薬の芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)も、即効性があります。就寝中によくこむら返りが起こる人は、予防のために就寝前に飲むとよいでしょう。ただし、過剰に摂取すると副作用の恐れがある甘草エキスが含まれるので、回数が多くなるときは、かかりつけ医に相談しましょう。

「こむら返りの回数が増えてきた。何か悪いところがあるのでは……」。そういう不安を感じている方も多いのですが、ほとんどの場合、回数が増えても、それ以外の症状がなければ、大きな病気の心配はありません。

ただし、回数の増加以外に、下の表にあるような症状が出てきたなら、糖尿病や心疾患、腎疾患などの病気が隠れている場合も。気になる人は、かかりつけ医にご相談ください。

のどの渇きや疲労感を感じる、尿の回数、量が増えた
▶︎糖尿病のサインかも?
腰痛や足のしびれが出てきた
▶︎脊柱管狭窄症のサインかも?
少し歩いただけで息が上がる、血圧が高くなってきた
▶︎心臓病のサインかも?
むくみがある。尿の回数、量が減った
▶︎腎臓病のサインかも?
手足が動かしにくい、言葉が出てこない
▶︎脳梗塞のサインかも。急いで病院の受診を!

高齢者は、自律神経(内臓や血管の働きを調整する神経)のうちの副交感神経の働きが弱くなるため、眠りが浅くなりがちです。その上、こむら返りで睡眠が途切れると、さらに眠りは浅くなってしまいます。

眠りの浅い期間が長く続くと、頭痛や血圧の上昇なども起こります。こむら返りの予防・改善で、心地よく質のよい睡眠を目指してください。

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医師が勧める
こむら返りのセルフケア

1. ストレッチをする

立って行う場合
立っているときに起こった場合や、痛みが軽く、立ち上がれる場合は、こちらがお勧め。アキレス腱を伸ばす要領で、ふくらはぎを引き伸ばします。

❶足を前後に開き、アキレス腱を伸ばすような姿勢をとる。このとき、つった方の足を後ろに置く。
❷前足の太もも部分に軽く手を置き、ゆっくりと体重をかける。
❸痛みが治まるまで行う。
※予防として行う場合、 運動の前後や、就寝前などのタイミングで1分程度伸ばす。

座って行う場合
寝ているときに起こったり、立ち上がれないほど強い痛みを感じたりするときは、こちらがお勧め。足の指先をゆっくりと手前に伸ばし、ふくらはぎをストレッチします。

❶つった方の足を前に出し、足の指を持つ。
❷足の指をゆっくりと体側に引き寄せ、ふくらはぎを伸ばす。
❸痛みが治まるまで行う。
◎体が硬いなどの理由で足の指が持てない場合は、つった方の足を壁につけて伸ばすとよい。
※予防として行う場合、運動の前後や就寝前などのタイミングで1分程度伸ばす。

2. 足のマッサージをする

足の血行がよくなるので、こむら返りの予防に効果的。ふくらはぎの他、足裏をもむのもお勧め。足裏を触って痛い場所は、こむら返りと関係している可能性が高い。その部分を重点的にもむとよい。

3. こまめに水分補給する

脱水はこむら返りの誘因となる。日頃からこまめな水分補給を心がけること。同時に、カルシウム、マグネシウムなどのミネラルを補給することも重要。短時間で大量に汗をかいた場合は、市販のイオン飲料を飲むのも有効。

4. バランスよい食事をとる

ミネラルバランスがくずれると、こむら返りが起こりやすくなる。バランスのよい食事を心がけること。特に、緑黄色野菜や海藻類など、ミネラルが豊富な食材を積極的にとるとよい。

5. 薬の確認をする

こむら返りは、薬の副作用が原因になることもある。特に、複数の薬を飲んでいる場合は注意が必要。また、利尿作用がある薬も要注意。水分不足でこむら返りが起こりやすくなる。あまりにもひどい場合は、主治医に相談を。

この記事は『安心』2022年9月号に掲載されています。

画像参照:https://www.makino-g.jp/book/b610283.html