玄米ならではの成分が多くの健康効果を現す

さらに、別の臨床試験も紹介しましょう。協力者5名に玄米甘酒を、別の5名に白米甘酒をそれぞれ4週間飲んでもらい、腸内細菌叢(腸内に棲息する細菌類の生態系)を比較しました。

すると、白米甘酒を飲んだグループは、善玉菌の増減にバラつきがありましたが、玄米甘酒を飲んだグループは、5名全員とも、善玉菌の割合が増加したのです。玄米甘酒の成分が腸内の善玉菌のエサになり、増殖を促している証左といえます。

ここで注目したいのが、玄米の成分が腸内で善玉菌を増やすと、血液中の短鎖脂肪酸(特に酪酸と吉草酸)が増加するという点です。「腸と脳はつながっている」とよくいいますが、短鎖脂肪酸は脳に働きかけて、食欲を抑制します。脂肪の燃焼を促したり、免疫力を高めたり、アレルギー症状を緩和したりといった作用もあります。

このような多くの健康効果の発現に深いかかわりがあるのが先述のγ‐オリザノールです。

γ‐オリザノールは自律神経を整えるので、睡眠障害や、抑うつ、軽度の認知機能障害の改善にも役立ちます。実に多彩な効果が期待できるのです。

では、どのような点に注意するとγ‐オリザノールを効果的に摂取できるのでしょうか。

なんと、すばらしいことに、γ‐オリザノールにはそうした気遣いは無用です。これはとても頑丈な物質で、安定性が高いのが特長。酸化にも強く、加熱しても冷凍しても、粉砕しても変性することはありません。

ですから、玄米甘酒を飲んでも、玄米ご飯を食べるのと同様にγ‐オリザノールを摂取できます。ちなみに、私が臨床試験で用いた玄米甘酒の量はコップ1杯弱で、これを玄米ご飯に換算すると茶碗2.5杯分です。

玄米甘酒は糖分も多いので、毎日の習慣にする場合は、食事でとるご飯の量を減らすなどして調整するとよいでしょう。

私も6~7年前から、玄米や玄米甘酒をとっています。これは主観ですが、以前より記憶力や頭の回転がよくなり、質問にも瞬発的に答えられるようになりました。もちろん、体重や体形も維持しています。ぜひ皆さんも、実践してみてください。

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玄米甘酒の作り方

材料
・玄米…1/2合(75g)
・こうじ…100g
・水…500ml(400ml+100ml)

❶玄米はさっと洗い、ひと晩浸水させる。水400mlとともに炊飯器の内釜に入れ、「お粥モード」で炊飯する(鍋で粥を作ってもよい)。

❷炊き上がったら水100mlを加え混ぜ、温度を下げる(60度が目安)。ほぐしたこうじを加え、さらに混ぜる。

❸炊飯器のふたを開けたまま、内釜にふきんをかけて、保温モードで6~8時間放置する。

※途中で、1~2回かき混ぜると均一な仕上がりになる。その際、温度を確認し、下がっていたら炊飯器のふたを閉め、上がっていたら一時的にふきんを外すなどして、60度前後を保つようにする。
※保温にヨーグルトメーカーを使う場合は、粥の温度を60度に下げてから、米こうじを混ぜて専用容器に移し、60度6時間にセットする。

❹ほんのりと黄色みを帯び、甘みが出ていたら出来上がり。冷めたら保存容器に入れて冷蔵庫へ。冷蔵で3日程度、冷凍で1ヵ月は保存可能。

この記事は『壮快』2022年9月号に掲載されています。

画像参照:https://www.makino-g.jp/book/b609152.html