逆流を防ぐ薬はない!生活習慣の改善が重要

逆流性食道炎は一種の生活習慣病といえ、胃酸の過剰な分泌や逆流を招くような生活習慣などが発症にかかわります。その要因を解説しましょう。

●喫煙
タバコは胃酸の分泌量を増やし、下部食道括約筋の締まりを緩める作用があります。

●肥満
腹部に脂肪が多いと、胃が押されて逆流を招きます。

●食事
食べ過ぎや脂肪分の多い食事は、下部食道括約筋を緩める原因となります。また、寝る直前の食事は、逆流を招きやすくなります。

●姿勢
前かがみの姿勢が多いと、胃が圧迫されて胃酸が逆流しやすくなります。

●筋肉量
最近の研究によると、筋肉量が減少したサルコペニアの人は、逆流性食道炎のリスクが高まるという報告があります。全身の筋肉量が減ると姿勢が悪くなり、食道と胃の角度が変わるため、逆流性食道炎を招くと考えられます。

●胃の形
食道裂孔ヘルニアなど、胃の形の影響で逆流が起こりやすくなることがあります。

●持病の影響
骨粗鬆症などで背骨が変形して背中が丸くなると胃が圧迫されて胃酸が逆流しやすくなります。糖尿病や膠原病の影響でも、発症しやすくなることがあります。

●薬の影響
高血圧などの治療に用いられるカルシウム拮抗薬や、気管支拡張薬のβ刺激薬、テオフィリンなどの薬は、逆流性食道炎の症状に影響を与える可能性があります。

逆流性食道炎は命にかかわる病気ではなく、軽症であれば自然治癒することが多いものです。しかし、不快症状が長引けば、日常生活に支障が出ることがあります。

また、重症化すると食道潰瘍になったり、可能性は低いですが、食道がんにつながったりするおそれもあります。高齢者の場合、逆流した胃酸を誤嚥すると、誤嚥性肺炎になるリスクもあります。

そのため、逆流性食道炎が疑われるときは、放置せずに内科や消化器内科を受診し、診断を受けることをお勧めします。

逆流性食道炎と診断されたら、薬による治療と生活の改善を行います。投薬治療では「プロトンポンプ阻害薬(PPI製剤)」など胃酸の分泌を抑える薬が主に用いられます。薬の服用で、逆流性食道炎の約8割の人に症状の改善が見られます。

胃酸の逆流そのものを防ぐ薬は今のところありません。治療効果を高めるには、投薬に加え、逆流を招きやすい生活習慣を改めることが欠かせません。

逆流性食道炎の診療ガイドラインにも、生活習慣の指導として「禁煙」「就寝3時間前までに食事を終える」「肥満予防や減量」「睡眠時の頭位を高くする」が挙げられており、こうした生活習慣の改善は重要です。

この記事は『壮快』2022年11月号に掲載されています。

画像参照:https://www.makino-g.jp/book/b612666.html