逆流性食道炎は名前のとおり、胃酸や胃の内容物が食道へ逆流することで、食道の粘膜がただれる病気です。胃酸の逆流そのものを防ぐ薬は今のところないため、治療では「プロトンポンプ阻害薬(PPI製剤)」など胃酸の分泌を抑える薬が主に用いられます。治療効果を高めるには、投薬に加え「禁煙」「就寝3時間前までに食事を終える」「肥満予防や減量」など、生活習慣の改善は重要です。【解説】内藤裕二(京都府立医科大学大学院医学研究科生体免疫栄養学講座教授)

解説者のプロフィール

内藤裕二(ないとう・ゆうじ)

京都府立医科大学消化器内科学教室准教授などを経て、2021年より現職。日本消化器内視鏡学会専門医。専門は消化器病学、消化器内視鏡学、消化管学、酸化ストレスと消化管炎症、生活習慣病。長年、腸内細菌を研究し続けている腸のスペシャリスト。著書に『酪酸菌を増やせば健康・長寿になれる 』(あさ出版)などがある。

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胃や食道と無関係そうな症状が現れることも

逆流性食道炎は名前のとおり、胃酸や胃の内容物が食道へ逆流することで、食道の粘膜がただれる病気です。

私たちが口にした飲食物は、食道を通って胃に運ばれます。胃では食べ物を消化するための、強い酸である胃酸が分泌されています。

胃には胃の壁を保護する粘液が分泌されているため、胃酸でダメージを受けることはありません。しかし、食道には胃のような酸から守るしくみはないため、胃酸が逆流すると、ダメージを受けるのです。

胃酸が逆流する原因としては、胃の入り口を開け閉めする弁の働きをしている下部食道括約筋が緩んで締まりが悪くなったり、胃酸の分泌量が多くなったりすることが考えられます。

逆流性食道炎と関係している臓器

逆流性食道炎の主な症状として、以下が挙げられます。

●胸やけ・呑酸(酸っぱい物がこみ上げてくる)
●ゲップが増える
●胃が痛む、もたれる
●胸がチリチリする、ムカムカする、気持ちが悪い

ときには、胃や食道と関係なさそうに思われる症状が現れることもあります。例えば、のどの違和感や声がれ、しつこいセキやぜんそく症状、胸や背中の痛み、肩こり、不眠などです。

こうした症状が現れたとき、胃酸の分泌を抑えるタイプの胃薬を飲んで症状が改善されたら、逆流性食道炎が原因の可能性があります。

特に、耳鼻咽喉科や呼吸器科で治療してもなかなかよくならないセキや気管支炎などは、逆流した胃酸による刺激が原因のことがあるので、要注意です。