ぽっちゃりモデルから「ラ・ファーファ」編集長へ。安藤うぃさん30歳からの挑戦

人生100年時代と言われる昨今、働き方や家族のあり方、学び方など生き方そのものが多様に変化してきている。人生の転機をチャンスに変えた人たちは、次のステップをどう踏み出したのだろう?

そんな先人たちの話を聞く連載「ネクストステージ」。第10回は、雑誌「ラ・ファーファ」編集長の安藤うぃさんにフォーカス。

モデルから編集長へ。突然開いたネクストステージのドア

日本初のプラスサイズ女性のためのファッション誌『ラ・ファーファ』の人気モデルとして活躍してきた安藤うぃさんが同誌の編集長に就任したのは、創刊10周年を迎えた今年の3月のこと。

読者と同じ立場に立ち、熱量を込めて情報発信できる編集長を雑誌の新しい顔に。そんな会社の方針から、発信力のある安藤さんに白羽の矢が立ったのだ。

「初代編集長で現ぶんか社の社長が焼肉を奢ってくれるというので行ってみたら、突然編集長になる気はないかと打診されたんです。思ってもいなかったお話だったので、返事は1か月ほど待っていただくことに。雑誌作りが大変だというのは知っていたし、私が引き受けて潰しちゃったらどうしようという不安もありました。でも10年間モデルとして一番近くで『ラ・ファーファ』を見てきたし、誰よりもぽっちゃり女子の気持ちを届けられるんじゃないかという自負はありました。覚悟を決めるまで時間がかかりましたが、やらないという選択肢は最初からなかったかもしれません」

編集長という大役を引き受け、今年1月から雑誌制作の実務がスタート。ぽっちゃり女子の一人として『ラ・ファーファ』で提案したい企画はたくさんあるものの、誌面として形にする方法がわからない。ラフ作りやデザイン入れなどは実務を通して学びながら、全企画のコーディネイトチェックや撮影に立ち合い、自らモデルもこなす。業務量の多さに「もう無理!」と何度も心が折れかけたそう。

「モデルは撮影したら終わりですが、編集者は撮影後すぐに写真を選んでデザイン入れして……やるべきことがこんなに次々湧いてくるんだって驚きました」

どんなに忙しくても安藤さんが大切に考えているのが、読者を集めての座談会。SNSで募集をかけ、ぽっちゃり女子ならではの悩みや実施してほしい企画などについて、対面でヒアリングし企画に反映しているのだそう。

「“ぽっちゃり女子”といっても体形やライフスタイルで悩みも違いますし、実際に会話をすることで1人1人の人生が見える。読者の声を聞くことはすごく大切だと思っています。今までの『ラ・ファーファ』は、一般的なぽっちゃりさんが着やすいリアルクローズを提案していて、真似しやすいのですが、逆に言えば無難なファッションでした。私は雑誌だからこそもっと、ぽっちゃりさんの新しい魅力が開拓できると思っていて、攻めたファッションも提案するようにしています。それがどう受け止められているか不安だったのですが、イベントで読者の方に『今はまだ日常では着られないかもしれないけどいつか着てみたいって、勇気をもらいました』と言っていただき、これで良かったんだなと確信を得ることができました」

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痩せる=可愛いという刷り込みにとらわれていた学生時代

コーディネートチェックではできるだけ試着をし、自分が納得したスタイルを発信したいという安藤さん。幼い頃から、おしゃれや人前に出ることに興味があったという。

「出身は岐阜なのですが、母はファッション関係の仕事をしており、細くてとてもおしゃれなんです。私も小さい頃からおしゃれに興味はありましたが、今ほど大きいサイズの洋服を売っている店もなかったですし、おしゃれはしたいのにサイズが合う服がない。そのことにジレンマを感じていました。幼稚園の頃からぽっちゃりしていて、そのことを自覚し始めたのは小学校高学年の頃。ダンスを始めたのですが、みんなより大きいという自覚があり、痩せなきゃいけない。痩せた方が可愛くなれると思っていました」

おしゃれが好きだからこそ、思うようにおしゃれを楽しめない体形に悩み、中学、高校時代は様々なダイエットに挑戦。不登校になった時期もあるという。

「今思えば無理なダイエットで自律神経のバランスを崩していたのかもしれません。人それぞれにベスト体重があると思うのですが、私は72キロくらいの今がベスト。おしゃれも楽しめるし、なおかつ生活にも無理がない。昔はそれがわからなくて、絶食に近いダイエットで58キロまで落としたこともありました。芸能活動に興味があったのでオーディションを受けたりしていたのですが、全然受からなくて、受かるためには痩せなくちゃと必死でした」