温泉や銭湯に行ったとき、ぽっちゃりしたおばあさんの股間から何か出ているのを見たことはありませんか。「おまたから内臓」と聞くとホラーの世界のように思いますが、これは「骨盤臓器脱」という実際にある病気です。女性なら誰もがなるリスクのある病気ですが、どんな人がなりやすいのでしょうか。産婦人科医の駒形依子先生に聞きました。

監修/駒形依子先生(こまがた医院院長)
2007年東京女子医科大学卒業後、米沢市立病院、東京女子医科大学病院産婦人科、同院東洋医学研究所を経て、2018年1月こまがた医院開業。2021年9月より介護付有料老人ホームの嘱託医兼代表取締役専務に就任し現在に至る。著書に『子宮内膜症は自分で治せる(マキノ出版)』『子宮筋腫は自分で治せる(マキノ出版)』『膣の女子力(KADOKAWA)』『自律神経を逆手にとって子宮を元気にする本(PHP研究所)』がある。

そもそも「骨盤臓器脱」って何?



腟から膀胱、直腸、子宮などが飛び出してくる

まず「骨盤臓器脱」とはどんな病気なのか教えてください。

「骨盤内にある子宮、膀胱、直腸は骨盤底筋群という筋肉で支えられています。しかし、何らかの原因で骨盤底筋群が緩むことで子宮、膀胱、直腸を支えられなくなり、臓器が腟から外へ出てきてしまうのです。

出やすい臓器は膀胱、直腸、子宮の順で、1つだけでなく複数出てしまうことも多いです」(駒形先生)

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骨盤臓器脱になりやすい人ってどんなタイプ?



更年期の肥満と便秘が大敵!

何らかの原因で骨盤底筋群が緩むということですが、どんな原因があるのでしょうか。また、どんな人がなりやすいのでしょうか。

「加齢と出産ダメージが最大の要因です。経産婦の4割以上が発症するとされていて、40代以降から増え、60代、70代がボリュームゾーンです。

他にも

更年期
肥満
便秘
重いものを持つ仕事を続けている

といったことも原因になります。更年期になるとエストロゲンが減ることで組織に潤いがなくなり、筋肉が硬くなりやすくなります。更年期までにしなやかな筋肉を維持する努力をしている方は骨盤臓器脱になるのに時間がかかりますが、何もしてこなかった人は骨盤内の内容物を支えるだけの力がないので臓器が下がりやすくます。

肥満や便秘が原因なのは、おなかに脂肪や滞留便があることで骨盤底筋群に負担がかかるからです。

重いものを持つ仕事は、踏ん張るときに骨盤底筋群に負担がかかるため。便をいきんで出すことも原因になります」(駒形先生)。