落花生の育て方

ここまで、落花生の基本情報や特性、栽培スケジュールなどについてご紹介してきました。では、ここからは菜園ライフの実践編として、落花生の育て方について詳しく解説していきます。種まき、または苗の植え付けからスタートし、水やりや追肥・土寄せなど日頃の管理、注意したい病害虫のほか、コンテナで栽培する方法も併せてまとめているので、お子さんがいる家庭ではベランダなどで育ててみてはいかがでしょうか。花から子房柄が伸び、地中にもぐっていく様子を一緒に観察するのは楽しい体験になるはずですし、食育にもつながりますよ!

土作り


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【菜園】

同じ科の野菜を続けて同じ場所で育てると、連作障害が出て生育が悪くなるので、前作にマメ科の植物を栽培していない場所を選びましょう。また、落花生は葉物野菜に比べて生育期間が長く、半年ほどは場所を占領することになります。長く使っても邪魔にならない場所かどうか、しっかり計画を立てておきましょう。

種まきの2〜3週間以上前に、苦土石灰を1㎡当たり100〜150g散布し、よく耕して土に混ぜ込んでおきます。さらに植え付けの1〜2週間前に、元肥を施します。畝幅を約60cm取り、中央に深さ15〜20cmほどの溝を掘って、1㎡当たり牛ふん堆肥約2kg、化成肥料(N-P-K=8-8-8)約50gを均一になるように入れ、埋め戻します。高さ10㎝ほどの畝を作りますが、畝の長さは、育てたい量や環境に応じて決めてください。土作りは植え付け直前ではなく、数週間前に行っておくことで、分解が進んで土が熟成します。

【コンテナ栽培】

野菜の栽培用にブレンドされた、市販の培養土を利用すると便利です。

種まきと間引き


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落花生の種まきの適期は、5月頃です。種まきからスタートするメリットは、輸送などによる苗への負担がかからず、環境に馴染みやすいことです。敷地が広くてたくさんの苗が欲しい場合には、コストカットにもなります。

ただし、落花生は苗も花苗店に出回っています。手軽に始めたいなら、苗の植え付けからのスタートがおすすめです。「2〜3株あれば十分だから、苗の植え付けから始めたい」という方は、次項に進んでください。

【菜園】

畝の中央に、株間30cmほどを取って深さ2cmほどの穴をあけ、落花生の種を2〜3粒ずつ播きます。厚み1cmほど土をかぶせて手のひらで軽く押さえ、水やりをします。播いた種を野鳥がついばむのを防ぐため、畝全体に不織布をかけ、周囲に土を盛って固定しておきましょう。

発芽して本葉がのぞいたら、不織布をはずしてかまいません。本葉が2〜3枚ついたら、弱々しい苗を間引き、1〜2本残します。

【コンテナ栽培】

コンテナは、1株につき10号鉢程度の大きさのものを準備します。

用意したコンテナの底穴にネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから培養土を入れます。水やりの際にすぐあふれ出すことのないように、土の量はコンテナの縁から2〜3cmほど下の高さまでを目安にし、ウォータースペースを取るとよいでしょう。2〜3cm間隔で、種を2cmほどの深さに3粒播き、厚み1cmほど土をかぶせます。最後にたっぷりと水を与えましょう。

発芽後、弱々しい苗を間引いて、1本残します。

苗の植え付け


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苗の植え付けからスタートする場合、適期は5月中旬〜6月上旬です。苗を購入する場合は、節間が詰まってがっしりと締まった、勢いのあるものを選びましょう。

【菜園】

畝の中央に、間隔を30cmほど取って、苗を植え付けていきます。ポットから苗を出して、根鉢を崩さないように植え付けることがポイントです。

【コンテナ栽培】

コンテナは、1株につき10号鉢程度の大きさのものを準備します。

用意したコンテナの底穴にネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから培養土を入れます。落花生の苗を仮置きし、高さを決めます。苗をポットから出したら、根鉢を崩さずにそのまま植え付けましょう。水やりの際にすぐあふれ出すことのないように、土の量はコンテナの縁から2〜3cmほど下の高さまでを目安にし、ウォータースペースを取っておきます。最後にたっぷりと水を与えましょう。

水やり


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【菜園】

地植えの場合は下から水が上がってくるので、ほとんど不要です。ただし、真夏に雨が降らず乾燥が続く場合は水やりをして補いましょう。真夏は昼間に水やりすると水の温度が上がり、株が弱ってしまうので、朝か夕方の涼しい時間帯に与えることが大切です。

【コンテナ栽培】

日頃から水やりを忘れずに管理します。土の表面が乾いたら、底穴から水が流れ出すまで、たっぷりと与えましょう。茎葉がだらんと下がっていたら、水を欲しがっているサインです。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチすることが、枯らさないポイント。乾燥させるとサヤが小さくなるので注意します。特に真夏は高温によって乾燥しやすくなるため、朝夕2回の水やりを欠かさないように。真夏は気温が上がっている昼間に水やりすると、水の温度が上がり、株が弱ってしまうので、朝夕の涼しい時間帯に行うことが大切です。

追肥・土寄せ


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【菜園】

1回目の追肥は、黄色い花が咲き始めた頃に行います。畝の両側に化成肥料(N-P-K=8-8-8)を1㎡当たり20gほど均一にばらまき、クワで土になじませるように耕しながら株元に土を寄せます。土をほぐしておいたほうが、子房柄の土中へのもぐり込みがスムーズになります。

2回目の追肥は、子房柄のもぐり込みが始まった頃に、畝の両側に化成肥料(N-P-K=8-8-8)を1㎡当たり20gほど均一にばらまき、株元に土を軽く寄せます。土中へのもぐり込みが始まっているので、優しく丁寧に行ってください。サヤが土中から出ていると緑色になって硬くなるので、土寄せを確実に行うことが大切です。

【コンテナ栽培】

つぼみが見え始めたら、化成肥料(N-P-K=8-8-8)小さじ1杯ほどを全体にばらまいて、土になじませます。以降は10日に1度を目安に液体肥料を与えましょう。

収穫


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10月頃、葉が黄色くなってきたら収穫のタイミングです。試し掘りをしてみて、実が充実していたら、株元をしっかり持って全体を引き上げましょう。充実した実とは、サヤの表面に出る網目模様がはっきりしていて、一つひとつのふっくらとした豆が目立っている状態のことです。

収穫後は、株をひっくり返してしばらく乾燥させ、サヤを取り外します。また、掘りたてをゆでても美味しく食べられます。

収穫のタイミングが遅れると、株を引き抜く時に子房柄が途中で切れてサヤが地中に残ってしまい、収穫しづらくなってしまうので、適期を逃さないことが大切です。

収穫後の保存


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取り外したサヤは、網袋などに入れて風通しのよい場所に吊るし、数日乾燥させましょう。振ってみて、中の実がカラカラと鳴るのを乾燥の目安にします。

種まき用にする場合は、殻付き(サヤ)のまま保存して、発芽率を下げないようにします。

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落花生の注意すべきポイント

ここまで、落花生の種まき・苗の植え付けからスタートし、収穫までの管理のポイントを栽培スケジュールを追って解説してきました。その他に注意すべきことについて、以下にご紹介していきます。

病害虫


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【病気】

落花生の栽培で注意したい病気は、褐斑病、白絹病、そうか病などです。

褐斑病は、春から秋に発生しやすい、カビの仲間の糸状菌によって引き起こされる病気です。最初は葉などに、小さな褐色の丸い斑点が出現。進行すると病斑は大きく多角形になって目立つようになり、全体が枯れ込んでいきます。多湿になると発生しやすいので、風通しのよい場所で管理し、枯れ葉があれば取り除いて株周りをきれいに保つとよいでしょう。病気が進行している株を見つけたら、周囲に蔓延しないように抜き取って処分してください。

白絹病は、気温が高くなる時期に発生しやすい病気です。特に多湿の環境で被害が大きくなる傾向に。最初は地際部が白い糸状の菌に覆われたようになり、やがて立ち枯れます。菌は長期間生き残り、同じ場所に植えた植物に発生しやすくなるので注意が必要です。病気にかかっている株を見つけたら、抜き取って土ごと処分しましょう。

そうか病が発生しやすいのは、気温が上がる夏から秋にかけて。茎や葉の表や裏に直径1〜2mmほどの褐色の斑点が多数現れ、かさぶた状になります。葉脈に沿って生じることが多いようです。病気が進行すると、実がつかなくなったり、実が肥大せずに収穫量が減ったりします。発見初期に病斑部分を切り取りましょう。病気が進行していれば、抜き取って土ごと処分します。

【害虫】

落花生の栽培で注意したい害虫は、ハスモンヨトウです。

ハスモンヨトウは蛾の幼虫で、大きくなると3〜5cmになります。主に夜に活動し、明るい時間は株元などに隠れています。食欲旺盛で葉を食害するので、小さいうちに見つけて捕殺しましょう。

連作障害


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落花生はマメ科の植物ですが、例えばエダマメ、ソラマメ、インゲンなどマメ科に属する植物を続けて同じ場所で栽培すると、連作障害が起きるので注意しましょう。同じ場所で同じ科目の植物を栽培し続けると、土壌のバランスが著しく崩れてしまい、特定の病原菌だけが増え、病気や線虫の大発生を招いたり、植物の生理障害が発生したりするリスクが高まるのです。そのため、一度マメ科の植物を植えたら、次の2〜3年は別の科に属する植物を栽培するようにしましょう。