「人の役に立ちたいんです」

──勉強して改めて知ったことはありますか?

私はいわゆる発達障害を特性や個性だと考えていました。だから『でこぼこポン!』の台本の困りごとを読んでも「これ私に当てはまるな。じゃあ変わってない(障がいではない)じゃん」と思っていたんです。

でも勉強するなかで、脳の機能障害であることを知りました。突然大きい声を出しちゃうのは世間一般の目線では変わっているんですね。

──発達障害の基礎から学んだんですね。

そうなんですよ。勉強自体すごくおもしろかったし、知識が身についてうれしかった。

応用できることも覚えましたよ。例えば、ウィリアム・ジェームズという心理学者が唱えた習慣を身につける方法です。何か良いことをしたら60秒以内に“快”なこと、つまり気持ちいいことを与える、これを200回繰り返すと習慣にできるらしいんですよ。

例えば片付けを習慣化させたいとしますよね。子どもが片付けをしていたら60秒以内に褒めたりご褒美をあげたりする。これを200回繰り返すと片付けを習慣化できるらしいです。

あと、興味深く読んだのは「心の多重構造」です。(ページをめくりながら)どこだったかな……すごくおもしろかったから付箋貼ってるはずなんですけど……あった! 付箋貼ってませんでした(笑)。

私たちの心はいくつかの層になっていて、中心のほうには「自分さえよければいい」と考える利己心が、その奥に「人の役に立とう」という利他心があるんですって。

なるほどなと思いました。モテたいから、知名度を上げたいから、お金がほしいから芸人を続けている、これは利己心です。でも、もっと奥深くには人を笑顔にさせたいという思いがある、これが利他心です。

私はずっと自分さえよければいいという利己心で生きてきたんですけど、発達障害について学んでから利他心を意識するようになりました。私、人の役に立ちたいんです。

(広告の後にも続きます)

資格を取ってわかった「みんな普通に話したい」

──資格取得を公表してから周囲の人から反応はありましたか?

「実はうちの子も障がいがあって……」と話してくれる人が増えました。みんな子どものことを普通に話したかったと言うんですよ。

──普通に、というのは?

療育施設(障害のある子どもが通所する施設の総称)の担当者さんに相談するようにじゃなく、「うちの子、おもちゃをすごく几帳面に並べて遊ぶのよ」「何それ、すごいね!」みたいな、子どもの様子を普通に話して、普通のリアクションがほしい、そんな思いがあったみたい。

話を聞くと「子どもがこんなことをしていて、すごくかわいかったのよ」って言うわけ。子どものかわいいところを誰かに伝えたい、そんな思いを私が受け止められるなら資格を取って良かったです。

あとね、街中でも親御さんに話しかけられることが増えたから、コミュニケーション能力が上がりました(笑)。

──そうなんですね! 人と接するときに意識していることはありますか?

苦手意識を持たずに接しようと心がけています。昔はね、この人苦手だな〜って思ったら、その人を避けていたんです。でも私が「苦手だ」と思うと、相手も同じ気持ちになっちゃうから。自分が変われば人も変わる、そう折り合いをつけています。

──そう思えるようになったのは、発達障害を学んで成長したからですか?

信念はあまり変わってないから子どものまま大人になってる感じだけど、勉強を通して人の気持ちを考えるようにはなりましたね。【後編(4/30公開)に続く】