MW Interview フィオナ・モリソンMW

フィオナ・モリソンMW
ボルドー・ポムロールの銘醸「シャトー・ル・パン」オーナーファミリーのフィオナ・モリソンMWに話を伺った。
クリスティーズのワイン部門で経験を積み、現在はボルドーを拠点にワインコンサルタントとして活動。2010年代半ばには日本ワインコンクールの審査員を務めた経験もあり、当時は甲州が中心で、スタイルもまだ発展途上だったと感じていただけに、今回の山梨訪問ではその後の進歩に驚かされたという。
「この10年の変化は本当に大きいです。生産者たちの意欲も非常に強いと感じました。固有品種と国際品種は異なる市場を持つ可能性があります。感度の高いワイン愛好家は甲州のような独自の品種に強く惹かれるでしょうが、シャルドネやメルロは伝統的なスタイルに親しんだ消費者に受け入れられやすいと思います」
その上で、国際市場での成功の鍵は固有品種だと語る。
「甲州を造って成功しているのは日本だけです。軽やかなスタイルだけでなく、やや厚みがあり旨味のニュアンスを備えた甲州に可能性を感じました。樽の使い方についても、過度にならない範囲で複雑さを与えるスタイルが有望だと思います。世界市場において唯一無二の品種を持つことは大きな強みであり、甲州は国際市場で重要な役割を果たす可能性があります」
日本食や日本酒がヨーロッパで広がりを見せるなか、日本産の飲料全体への関心も高まっているという。今回のような視察で得た情報は「SNSを通じて各国のソムリエやワイン関係者の間で共有されていく」とモリソンMWは予想している。
ワイナリー訪問「98WINEs」
最後に一行が訪れたのは、山梨県塩山にある「98WINEs」だ。代表兼醸造家の平山繁之氏がワイナリーで一行を迎え、ワイン造りの考え方と具体的な醸造方法について説明した。
平山氏は「うちはかなり珍しい造りをしている」と独自のアプローチを紹介。
98WINEsのワイン造りの特徴は、人為的な介入をできるだけ避け、場所に委ねる点にある。(彼らはそれを「場所文化」と呼んでいる)。
白ワインでは、健全な果実を選び、全房プレスを行ったうえで、発酵はステンレスタンクで進める。発酵初期は自然酵母に任せ、アルコール度数が3〜4%に達した段階でニュートラルな発酵を促すドライイーストを少量加えてアルコール発酵を安定させるという。清澄剤の添加や濾過は行わず、亜硫酸も使用しない。

大橋健一MW(左)と「98WINEs」代表の平山繁之氏
特に関心を集めていたのが、一部の白ワインで採用している手法である。
収穫したブドウの約90%をタンクで発酵させ、残りの約10%は日光に当てて約2週間乾燥させる。その後、除梗し発酵中のタンクに加えることで、発酵環境の異なるロットを組み合わせて仕上げるという。
赤ワインでは、発酵中のタンクを屋外に出して日光に当てるというユニークな方法も紹介された。日中は太陽の熱で温度が上がり、夜は気温の低いセラーに戻す。この工程を繰り返すことで、独特の風味や色調を引き出す。
これらの手法に、MWから「非常に興味深い」という声が上がった。
個性的な醸造哲学に触れ、MWたちは日本ワインの多様な可能性をあらためて実感した様子だった。

「98WINEs」ではスタンディング形式でアペリティフとワインが供された

試飲ワイン『芒(NOGI)白2023年』『穀(KOKU) 白2020年』『霜(SOU)ロゼ2023年』『穀(KOKU)赤2023年』(左から)

