
今、日本で絶大な人気を誇る「オージープランツ」。その故郷であるオーストラリアでの暮らしは、日本の園芸常識を覆す驚きの連続でした。北から降り注ぐ太陽、2億年前から姿を変えない神秘の樹木、そして火災さえも再生の糧にする不屈の生命力。シドニー在住の新井直美さんが現地で肌で感じた、力強くも美しい植物たちとの刺激的な日常を7つの視点で綴ります。
北から注ぐ太陽は日本の1.5倍! 逆転の光が引き出す驚異の生命力
シドニーで暮らし始めて、ガーデニングの常識が根底から覆されたこと。それは、太陽が「北」から降り注ぐということです。
日本では「南向きの日当たり」が理想ですが、南半球のオーストラリアでは正反対。庭づくりの際、ついつい癖で南側を確認してしまいますが、主役の光は常に北側にあります。北から降り注ぐ力強い光を受けて、一日中明るい庭の景色には、移住当初とても不思議な感覚を覚えました。

この「光」の豊かさは、単なる感覚だけではないようです。近年の研究で用いられる、気象データや日光量から植物の育ちやすさを数値化した「Plant Growth Index(植物成長指数)」という指標を見ても、シドニーのポテンシャルは圧倒的。年間の日照時間は約2,847時間と、日本の約1,935時間に比べて約1.5倍もの差があるのです。
特に驚くのは、冬の晴天率の高さです。シドニーの冬は光合成が活発に行われる条件が揃っているため、植物たちは「冬眠」して足を止めるのではなく、一年中休みなく、じわじわと生命活動を続けています。
日本では考えられないほどの成長スピードで、数カ月目を離しただけで見上げる高さに育ってしまう木々。日本とは逆の空を見上げながら、四季を通じてパワフルに活動し続ける植物たちのエネルギーに、日々驚きと元気をもらっています。
バンクシアやグレヴィレアも! 2万6,000種が織りなす「固有種」の圧倒的楽園

今、日本の園芸店で絶大な人気を誇る「オージープランツ」。その個性的で力強い姿に魅了されている方も多いのではないでしょうか。じつは私が初めてその洗練された美しさに衝撃を受けたのは、2000年のシドニーオリンピックでした。
メダリストに贈られたのは、伝統的なバラではなく、ニューサウスウェールズ州の花「ワラタ」を主役にしたネイティブフラワーの花束。その野性的で彫刻的な造形美は、世界中に新鮮な驚きを与えました。

近年、日本でもガーデンセンターなどで「オージープランツ」を目にする機会が増え、そのユニークな姿に魅了される方も多いでしょう。しかし、現地で暮らしてさらに驚かされたのは、その圧倒的な多様性の正体です。オーストラリアには約2万4,000〜2万6,000種もの植物が存在し、花を咲かせるものだけでも約2万種にのぼります。 さらに驚くべきは、その約85〜90%が、この大陸以外では決して見ることができない「固有種」であるということ。日本で出会えるのは、その広大な世界のごく一部にすぎないという事実に、改めて圧倒されました。

日本でお馴染みのミモザ(アカシア)だけでも1,200種以上、ユーカリにいたっては800種以上ものバリエーションがあるのです。気の遠くなるような年月をかけ、厳しい環境の中で独自に進化を遂げてきた植物たち。
可愛らしいだけではない、個性的でタフな美しさ。その背景にある膨大な多様性とダイナミックな風土を知るたびに、オーストラリアの庭が持つ奥深さに、ますます心が惹きつけられてやみません。
