ティーツリーはアロマより「家庭の常備薬」! スーパーで買える万能薬の距離感

シドニーに住み始めて間もない頃、指を怪我した私に友人がそっと手渡してくれたのは、小さなティーツリーオイルの瓶でした。「傷口に塗っておくといいよ、殺菌作用があるから」と教えられ、最初は少し戸惑ったのを覚えています。
日本でティーツリーといえば、アロマショップで見かけるおしゃれな精油のイメージ。ところが、ここオーストラリアではスーパーや薬局の棚にごく当たり前のように並んでいます。その「距離の近さ」には本当に驚かされました。

じつはティーツリー(Melaleuca alternifolia)は、オーストラリアだけに自生する固有の植物です。白く薄い紙を重ねたような樹皮が特徴で、古くから先住民のアボリジニの人々が「森の医学」として、その葉を怪我の治療などに大切に用いてきました。
使い方も驚くほど多用途です。ニキビができたらちょんと塗り、虫刺されやちょっとした擦り傷にも。まるで「困った時は、まずティーツリー」という万能薬のような存在。化学的な薬品に頼る前に、まずは身近にある植物の力を借りる――。
そんな、自然由来の知恵を気負わず当たり前に生活に取り入れる軽やかな感覚は、オーストラリアでの暮らしが教えてくれた新鮮で素敵な発見でした。
ウォレマイ・パインは「生きた化石」! 2億年前から姿を変えない、20世紀最大の発見

「約2億年前から姿を変えず、絶滅したと思われていた植物がここにあるのよ」。そう教えてくれたのは、ロイヤル・ボタニック・ガーデンでボランティアをされているレジーナさんでした。

その植物の名は「ウォレマイ・パイン(Wollemi Pine/ウォレミマツ)」。かつては化石の中でしかその存在を知られておらず、約200万年前に絶滅したと考えられていました。ところが1994年、シドニー近郊のウォレマイ国立公園にて、深い峡谷を歩いていた公園局職員のデビッド・ノーブルさんが、偶然にもこの樹木を「再発見」したのです。

「20世紀最大の植物学的発見」として世界中に大きな衝撃を与えたこのニュースは、まさに恐竜時代の生き残りと出会ったような奇跡でした。ジュラ紀から白亜紀にかけて繁栄したナンヨウスギ科の植物で、2億年以上もの間、その姿をほとんど変えていないといわれています。

現在も、病気の持ち込みや乱獲から守るため、自生地の正確な場所は「最高機密」。限られた研究者以外、誰も立ち入ることができません。そんな神秘のヴェールに包まれた「ジュラシック・ツリー」が、今ではここロイヤル・ボタニック・ガーデンで大切に育てられ、私たちの目の前で瑞々しい葉を広げている――。レジーナさんの熱心な解説を聞きながら、オーストラリアの自然が持つミステリアスな奥深さに、改めて圧倒される思いでした。
