◆障がい特性への理解が広がる社会を夢見る
――障がい者の介護をめぐる痛ましい事件について、どのように受け止めていますか。中野:国として、障がいのある人を地域で支えていこうという流れがありますよね。それ自体はいいことだと思うんですが、受け入れる側の理解が追いついていないと、どうしても孤立してしまう。
孤立する背景には、社会の理解が十分でないことがあると思います。障がいのある人のことをよく知らないがゆえに、「怖い」と感じて距離を置いてしまうこともある。でも実際には、人混みや暑さなどで声が出てしまう子もいるなど、それぞれに特性があるだけなんです。そうしたことへの理解が、もう少し広がっていけばいいなと思います。
私自身、ホテルの仕事を定年退職したあと、福祉施設で働くようになり、街中で支援を受けながら生活している人たちの姿が、以前よりも意識的に目に入るようになりました。そういう風景を当たり前に受け止められる人が増えていけばいいなと思っています。
◆孤立を防ぐセーフティーネットを
――同じように障がい者をケアしている家庭に、伝えたいことはありますか。中野:やはり、一人で抱え込まないでほしいですね。誰かとつながって、悩みを共有するだけでも、気持ちは少し楽になると思うんです。
私自身、妻が亡くなってからの数年間は、いろんなことを一人で考えすぎてしまって、頭の中がパンパンになり、潰れてしまいそうなときもありました。「今の状況は夢なんじゃないか」「目が覚めたら、妻が元気だった頃に戻っているんじゃないか」と思うことも何度もあって……。そういう思いは内に抱え込まず、人との会話や文章で外に出すことが大事だと感じています。
それと、子どもの特性に合った学校や環境を選ぶこともとても大事ですね。うちの場合は、小学校へ進学する際、試行錯誤の末に支援学校を選びましたが、今はあの選択でよかったと思っています。療育手帳についても、いろんな考え方があると思いますが、手帳があることで受けられる福祉サービスもあるので、使える支援は使いながら、できるだけ孤立しない環境をつくることが大事だと思います。
高齢化が進む中で、年老いた親が障がいのある子どもを支える老障介護は、これからも増えていくはずです。そうした中で、自分が亡き後の子どもの将来を悲観して、追い詰められてしまう状況も出てくる。誰もそんな状況に陥りたいわけではないと思うんです。
そうした事態を防ぐためにも、安心して頼れるセーフティーネットが、もっと広がっていくことを願っています。
<取材・文/秋山志緒>
【秋山志緒】
大阪府出身。外資系金融機関で広報業務に従事した後に、フリーのライター・編集者として独立。マネー分野を得意としながらも、ライフやエンタメなど幅広く執筆中。ファイナンシャルプランナー(AFP)。X(旧Twitter):@COstyle

