◆第2の柱 敵を一語で固定する技術
トランプ構文の第2の柱は、敵を一語で固定する技術である。「Crooked Hillary」、「Fake News」、「China Virus」といった表現は、複雑な現実を乱暴に切り分けるが、その乱暴さがかえって効く。相手の経歴や主張を細かく検討する必要がなくなるからである。ひとたびラベルが貼られれば、その相手は議論の対象ではなく敵として処理される。日本の政治家が論点を霧の中へ逃がすのに対し、トランプ氏は論点を敵味方の二色へ塗り替える。複雑さを消し、思考の手間を省き、感情のみを前へ押し出す。この単純化は知的には粗雑であっても、政治的にはきわめて強力である。 支持者は自分の位置をすぐに確認でき、反対者への怒りを共有できるからである。

