◆粗雑な言葉が「本音」に聞こえてしまう逆説
この構文の厄介な点は、不誠実に見える粗さが、逆に誠実さのように受けとられる瞬間があることである。普通の政治家は言葉を選び、角を削り、丁寧に整えようとする。ところが、その慎重さが続くと、人びとは整いすぎた言葉に疲れる。そこで乱暴でも本音らしく聞こえる言葉が出てくると、内容の正確さとは別のところで信頼が発生する。「ここまで言うのだから本気なのだろう」、「敵に嫌われるのだから本物なのだろう」、と感じてしまう。この逆説は現代政治のかなり深い病理を示している。慎重な言葉が嘘っぽく聞こえ、粗雑な言葉が本音っぽく聞こえてしまう。
加えて、トランプ構文はメディアとの敵対すら資源に変える。批判されればされるほど発言は大きく報じられ、支持者の側では既存メディアに嫌われる人物としての信憑性が増す。日本の政治家の多くは炎上を恐れて語らない。トランプ氏は炎上そのものを拡散装置として利用する。 この差は大きい。スキャンダルや暴言が打撃になるどころか、舞台装置として機能してしまうからである。批判は抑止ではなく燃料となり、構文はますます強化される。

