5. シャトー・オーゾンヌ――31年ぶりの「全量統合」が示す確信

オーナーのアラン・ヴォーティエ氏(右)とドメーヌの管理部門を担当する三女のコンスタンスさん
サンテミリオンの頂点に君臨するオーゾンヌ。11世代この地を守るヴォーティエ家を訪ね、2025年産の試飲と家族の素顔を取材した。一家の精神は「誠実、謙虚、慎重」。流行に流されずテロワールを正確に瓶へ閉じ込める姿勢を、当主アラン氏の言葉が象徴する。「私は『樽が多すぎる』とは言わない。『力強さが足りない』と言うのだ」。新樽100%に耐える凝縮への自信の裏返しだ。
2025年は気候変動が新たな対応を迫った。通常最後に熟すプティ・ヴェルドが早熟し、CFより早い9月15日に収穫される逆転が起きた。そしてオーゾンヌ本体では1994年以来31年ぶりの大決断が下る。「すべての区画を統合し、単一のグラン・ヴァンとして発表する」。若木が非常に優れた品質に達し、セカンド「シャペル・ドーゾンヌ」へ回す必要がなくなったのだ(2025年は欠番)。わずか7.25haから生まれ50年以上熟成するグラン・ヴァンは、CF65%、M30%、CS5%。格付けを離脱してなお市場が「頂点」と認め続ける所以が、この迷いのない決断に表れる。
ファミリーの各シャトーには役割がある。「試験農園」のド・フォンベル(16ha)では、絶滅の危機にあったカルメネールをアラン氏が2005年に植樹し、そのスパイシーさがCSと見事に調和する。娘コンスタンスさんの「CFへの愛」はオー・シマールを一変させ、栽培面積を10haから4haへ削減してフラン主体(80%)へ再定義した。このほか岩の住居跡のラ・クロット(4ha、M85%・CF15%)、「古いレシピによる現代の銘品」ムーラン・サン・ジョルジュ(7ha)、地下水脈で干ばつを回避した40haのシマール(M60%、CF22%、CS14%、PV4%)と、ポートフォリオは多彩だ。

11世代続くヴォーティエ家。左から当主アラン・ヴォーティエ氏、長男・エドゥアール氏、三女・コンスタンスさん
日本の専門家に興味深いのは、オーゾンヌのCFの「血統」が右岸に広がる事実だ。アランが選別したセレクション・マサルはトロロン・モンドへ、さらにジャン・フォールへ受け継がれた。遺伝資源の源泉としてのオーゾンヌの存在感は、格付けを離れた今なお揺らがない。
取材の終わり間際、アラン氏は愛娘コンスタンスさんとの絆を笑顔で語った。家族の情熱が、オーゾンヌの次の300年を形作るだろう。


ヴォーティエ家ポートフォリオ(2025年)
後編に続く

ボルドー・プリムール2025 特別レポート
右岸九景――「少収穫の当たり年」を巡る旅 後編
ポムロール/サンテミリオン 有力9シャトー訪問記 - ワイン王国
本企画は「ボルドー・プリムール2025 特別レポート」の後編となります。
前編は下記URLよりお読みいただけます。
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6. シャトー・ジャン・フォール――「太陽(スーリャ)」と名付けられた復活の結晶
2025年ヴィンテージは、サンスクリット語で「太陽」を意味する「Surya(スーリャ)」と名付けられた
シュヴァル・ブランやフィジャックに隣接する絶好の地、サンテミリオンの粘土質台地の中心部に18haの単一区画を持つジャン・フォールがある。かつて「グルヌイエール(カエルの生息地)」と呼ば...

