◆手取りは深夜の牛丼屋バイト以下
過酷な労働条件に対して、元請けから発生する日当は2万円。筆者は孫請けの組織に所属していたため、10%のマージンを差し引かれて1万8000円が支給される。月20日から22日の稼働なので、月収に換算すると約36万から40万円の計算だ。しかし、ここから以下の経費が容赦なく天引きされる。
車両リース代: 2万3000円
ガソリン代: 約5万円
任意保険料: 約5千円
さらに個人事業主の扱いとなるため、健康保険や年金、各種税金も自己負担で支払わなければならない。すべての経費を差し引くと、深夜の牛丼屋でアルバイトをしたほうが遥かにマシと言わざるを得ない手取り額に減少する。
周囲のドライバーたちは、休日に別の配送案件を入れ、ボロボロになりながら日々を凌いでいた。筆者は運転免許を取得した直後でそこまで働く気力が湧かず、休日は泥のように眠るだけであった。
◆辞めさせないための“足枷”となるのが…
当時はすっかり気力を失っていたため、どうにか現場を離脱しようと画策した。立ち塞がった足枷が「カーリース制度」だ。組織が月額で車両を貸与してくれるため、初期投資を抑えて開業できるメリットを謳う反面、リース費用は相場より割高に設定されている。おまけに、契約を解除する際には車体についた微細な傷の修理費用を支払ったうえで、オーナーへ返却せねばならない。業務は即座に辞めたかったが、日々の生活を維持するだけで精一杯であり、貯蓄ができる見込みもなく、途方に暮れていた。ジリ貧の生活のなか、渋谷の道玄坂で駐禁を2回連続で取られて心が折れかけた時、オーナーへ退職の意思を伝えた。だが、要領よく配送をこなして顧客からの評判が良かったせいか、オーナーは「将来的な単価改定を検討するから」と何度も慰留してきた。「今月の報酬を全額車両の修理代に充当して構わないから、車を返却させてくれ」とやけくそで頼んでも、「時期は確約できないが、しばらくは受理できない」と突っぱねられた。
死んだ魚のような目で配送を続けていた筆者に、予想だにしない転機が訪れる。

