◆甘い広告に潜む奴隷契約の罠
軽貨物ドライバーを開始した2024年頃、各種SNSでは盛んに「軽貨物は稼げる」という広告が配信されていた。筆者も誇大広告に惹かれて参入した口だが、現実は甘いどころか、奴隷契約に等しい構造であった。ピンハネが10%行われる時点で困窮を極めるわけだが、そこから固定経費が差し引かれて資金繰りが悪化すると、次第に身動きが取れなくなる。休日さえ自由に設定できず、過酷な肉体労働を強いられる泥沼に陥ってしまうのだ。荷物の個数に応じて報酬が加算される出来高制の案件であれば、展開は異なっていたかもしれない。しかし、経験の浅い人間が多少のスキルを身につけたところで、稼げる上限などたかが知れている。荷物量は季節や情勢によって激しく変動するため、当然ながら収入が落ち込む時期も到来する。極めて安定した物量を維持できる組織に巡り合わない限り、大きな金額を稼ぐことは不可能だろう。それならば、最初から配送大手の正社員や直接雇用の配達員として勤務したほうが健全である。
甘言を弄した広告を安易に信じてしまった馬鹿な自分を恨んだが、仲介業者ではなく、不意の事故のおかげで足抜けできた展開は怪我の功名であった。偶然手にした幸運を噛み締めつつ、安易な職業選択で誰かの養分にならないことを、固く心に誓ったのだった。
<TEXT/千馬岳史>
【千馬岳史】
小説家を夢見た結果、ライターになってしまった零細個人事業主。小説よりルポやエッセイが得意。年に数回誰かが壊滅的な不幸に見舞われる瞬間に遭遇し、自身も実家が全焼したり会社が倒産したりと災難多数。不幸を不幸のまま終わらせないために文章を書いています。X:@Nulls48807788

