「年金生活」を見据え、約20年前に都営住宅に入居
野坂さんが完全な年金生活に入ったのは70歳になってから。パート勤務していたビジネスホテルで定年となったためだ。
「本音を言えばもう2年ぐらい働きたかったわね。頭はしっかりしているし耳もちゃんと聴こえる。糖尿とか高血圧もないけどルールだから仕方ない。働けそうなところを探してみたけど駄目でした。満70歳のおばあさんを使おうっていう奇特な会社はありませんよ。求人情報誌で一番募集が多いビル清掃も、68歳までと言う注釈がついていましたもの」
今の生活は物価高の影響をひしひしと感じているが、都営住宅で家賃が安いのは助かっている。場所は江戸川区で都営地下鉄新宿線の沿線。昭和44年築と古いがスーパーリフォームしているので内部はきれいだ。
「1DKで狭いけど家賃は2万3000円なんです。同じ駅の近くにあるアパートは5万円以上だから本当に助かっている」
都営住宅に入居申し込みを始めたのは、息子が専門学校を卒業して社会人になった04年から。単身者可という募集は少なかったが6回目の応募で抽選に当選、08年11月に入居し現在に至っている。
「マイホームが持てればいいけどそれは無理。歳を取ったときに家賃で困らないよう早く手を打ったのが良かったと思う。今も民間のアパートだったら生活するのは相当きつい。そもそも高齢者に貸してくれるか分からないでしょ。何事も先を見越して備えなければ駄目なのよ」
いくら安くてもあれは嫌…頭を抱えた「政府備蓄米」
月々の固定費は家賃、水道光熱費、固定電話代、NHKの受信料、国民健康保険の保険料など一切合切で6万3000~4000円。残る7万円と少しで1か月の生活を賄っている。
「食料品の高騰が止まらないのが悩みの種です。お米は少し下がったけど2年前と比べるとほぼ2倍。前は5kg2200円ぐらいだったのに、今は4800円。驚きだわ、主食がこんなに高い国って他にあるのかしら? 馬鹿な大臣がお米を買ったことはないなんて言ってたでしょ、あれには怒り心頭でしたよ」
1時間並んで放出された政府備蓄米を買ったが、何となく色が違った感じがして、炊き上がってもやや硬くてあまり美味しくはなかった。いくら安くてもあれは嫌だったので、最近は台湾産のお米を食べているが、思っていた以上に美味しい。
「政府備蓄米よりはるかに美味しいですよ。炊き上がりはふっくらしているし食感もいい、アメリカ産のお米も食べてみたけど上だと思うわ。でも前よりお米を食べなくなりましたよ。お餅、麺類、パンなどを食べることが多くなった」
お米以外のあれもこれも高くなっている。前は1枚98円だった塩サバが158円に、納豆3個パックは88円から118円に。カップ麺、レトルト食品、乳製品も小刻みな値上げが数回あって、4年ぐらい前と比べると3割近く値上がりしている。
「買い物はよく考えないと駄目ですね。団地の近くに大型のショッピングセンターがあるのですが、ここで食料品や衣類を買うことはない。テナントで入っている100円ショップとかカットハウスに入るぐらいです、理由は高いから。玉ねぎ1個が88円なんて馬鹿じゃないのと思う。もっと安いスーパーや八百屋はいくらでもあるもの」
1か月の食費は概ね2万5000円ぐらいでやり繰りしている。「この金額で買える食料品の量は明らかに少なくなっている。だから豚肉はロースの切り身から小間切れにするとか、ひき肉は大容量パックを買って小分けにするとか。お魚は安いイワシとかアジばかりね」
コンビニで買い物するなんてもってのほか。外食もほとんどしない。以前は月に2、3回行っていたてんや、デニーズ、ガストなどは、年金が振り込まれた直後の週末と少し余りそうな月末だけで我慢している。
