「これくらいは、いいでしょ!?」…創業から苦楽を共にした48歳部長の裏切り。〈850万円の不正経費〉が発覚、社長が直面した「会社分裂の危機」【社労士の助言】

「これくらいは、いいでしょ!?」…創業から苦楽を共にした48歳部長の裏切り。〈850万円の不正経費〉が発覚、社長が直面した「会社分裂の危機」【社労士の助言】

即解雇はNG…不正発覚時に会社が踏むべき「4つのステップ」

もし、社内でこのような経費の不正請求が発覚した場合、怒りに任せて「明日から来なくていい、クビだ!」と即座に懲戒解雇処分にするのは絶対に避けてください。

どれだけ相手が悪質であっても、法的な手続きを怠ると「不当解雇」として労働裁判で会社側が敗訴し、多額のバックペイ(解雇期間中の未払い賃金)の支払いを命じられるリスクがあります。会社が踏むべき適正な手順は、以下の4ステップです。

1.客観的な「証拠」を集める

本人の勘違いや言い逃れ、証拠隠滅を封じるために、まずは外堀を固めます。下記のような証拠を集めましょう。

・過去数年分の経費申請書、領収書のコピー

・出張先とされる場所の利用実績の有無(ホテルへの確認、取引先へのヒアリング)

・社内PCのログ、メール履歴、社用車のETC履歴やGPSデータの確認

2.本人に「説明の機会」を与える

証拠を揃えたうえで、本人に事実関係を確認するヒアリングを行います。この際、必ず「本人の言い分を聞く(弁明の機会を与える)」プロセスを設け、議事録に残してください。これを怠ると、のちのち「弁明の機会も与えられず一方的に処分された」と不法行為を主張される材料になってしまいます。

3.就業規則に基づく「適正な懲戒処分」の決定

次に、会社の就業規則の「懲戒規定」と照らし合わせます。今回のケースでは金額が850万円と巨額であるほか、期間も5年間と長期にわたり悪質性が高いため「懲戒解雇」の妥当性は十分に高いといえます。

とはいえ、現場の職人が動揺して社内が割れるリスクを考慮し、まずは「自宅待機命令」を出して土田部長を現場から引き離し、冷静な判断を下す時間を確保するのが先決です。

4.不正金の「返還請求(損害賠償請求)」

不正に受給した850万円は、会社に対する不法行為(民法第709条)または不当利得(民法第703条)にあたります。全額の返還を求める書面(合意書)を交わし、一括返済が難しい場合は現実的な分割計画を締結します。

その際、「月々10万円ずつの返済とし、支払いが滞った場合は期限の利益を喪失し、年3%の法定利率による遅延損害金を付加する」といった法的に有効な条項を必ず盛り込みましょう。

不正発覚後からでも再起できる「3つ」の逆転策

不正が発覚した後でも、会社を立て直すためにできることはあります。ここでは、いまからでも実践できる「3つの逆転策」を紹介します。

1.幹部でも例外なし…「経費精算ルール」の二重チェック化

「〇〇さんがいうなら間違いない」といった属人的な運用はただちに撤廃しましょう。具体的には、下記のような対策があげられます。

・3万円以上の経費精算には、領収書だけでなく『仕様書』『議事録』『出張報告書』の添付を必須とする

・部長・役員クラスの経費精算であっても、経理担当の一次チェック後、必ず最終的に社長(または別の役員)が明細を確認して決裁する

仕組みとして「例外」を作らないことが、結果的に幹部を“魔の手”から守ります。

2.就業規則の「懲戒規定」をアップデートし、周知する

創業時に作った就業規則をそのまま放置していませんか? 「経費の不正請求、架空出張、社用カードの私的利用は、金額の多寡にかかわらず懲戒解雇の対象となる」といった旨を明記し、全社員に向けて改めて周知・研修を行いましょう。

これにより、「会社は金銭的不正を絶対に許さない」という強い抑止力を持たせることができます。

3.外部の専門家(社労士・税理士)による「定期監査」の導入

社内の人間だけでチェックしようとすると、どうしても「上司への遠慮」や「忖度」が生まれます。そのため、半年に1回か年に1回、社会保険労務士による「労務監査(勤怠記録と出張手当の整合性チェック)」や、税理士による「経費の抽出監査」を導入するようにしましょう。

「今度から外部の先生が定期的にチェックすることになったから、ルール通りにしっかりやってね」と、外部の力を言い訳(悪者)に使うことで、社内の人間関係をギスギスさせることなく、健全なガバナンスを維持できます。

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